際立った才能を持たない者が、NBAで成功を収めるにはどうすればいいのか?サイズに恵まれず、高い身体能力があるわけでも、特別にシュートが上手いわけでもない。そんな選手がなぜ最高峰のリーグで13年間も生き残り、中心選手として3度の優勝を味わうことができたのか?
その答えはディフェンスにあった。派手なブロックやスティールを連発するのではなく、ひたすら相手選手にへばりつき、手やヒジや足を使って簡単にシュートを打たせない。人呼んで“NBAで最もダーティーな選手”――。しかしそれは、ブルース・ボウエンにとって最大級の賛辞だった。
ボウエンがNBAに辿り着くまでの道程は、並大抵のものではなかった。少年時代、酒浸りの父親は家に寄りつかず、たまに顔を見せれば、ボウエンがアルバイトで稼いだ金を無断で持ち出した。一方の母親はといえばドラッグのジャンキーで、薬のために家具さえも人手に渡した。彼女が夜の街をうろついている間、ブルース少年は親戚や友人の家をたらい回しにされたのである。
だが、こんな最悪の環境でもボウエンの性根が腐ることはなかった。彼が7歳の頃のこと。近くの体育館で行なわれていた試合をどうしても観たかったのだが、手持ちの金は入場料に1ドル足りない。そこで彼はクイン・クロージャーという見知らぬ男性に声をかけ、不足分を借りた。2年後、彼はクロージャーを訪ねて1ドルを返すのだが、それ以来、クロージャー家はボウエンにとって本物の家庭のような場所になったのだ。
どうしようもない実父が、唯一息子に残したのはアスリートとしての才能だった。ブルース・シニアはプロにこそなれなかったが、ロサンゼルス界隈では名の知れたバスケットボール選手だった。従兄弟のライアンもMLBの投手で、通算17勝をあげている。ボウエン自身も当初は野球をしていたが、身長が2メートルまで伸びたことで、バスケットを選択した。
カリフォルニア州フレズノのエディソン高校ではスター選手として活躍したものの、有力大学からは声がかからなかった。そこで一計を案じた彼は、周辺地域の大学に片っ端から電話をかけまくる。
「ボウエンという、ディビジョンIでも通用する選手がいるんだが」。低い声音でコーチになりすまし、自らを売り込んだところ、カリフォルニア大フラートン校にもぐり込むことができたのである。
その答えはディフェンスにあった。派手なブロックやスティールを連発するのではなく、ひたすら相手選手にへばりつき、手やヒジや足を使って簡単にシュートを打たせない。人呼んで“NBAで最もダーティーな選手”――。しかしそれは、ブルース・ボウエンにとって最大級の賛辞だった。
ボウエンがNBAに辿り着くまでの道程は、並大抵のものではなかった。少年時代、酒浸りの父親は家に寄りつかず、たまに顔を見せれば、ボウエンがアルバイトで稼いだ金を無断で持ち出した。一方の母親はといえばドラッグのジャンキーで、薬のために家具さえも人手に渡した。彼女が夜の街をうろついている間、ブルース少年は親戚や友人の家をたらい回しにされたのである。
だが、こんな最悪の環境でもボウエンの性根が腐ることはなかった。彼が7歳の頃のこと。近くの体育館で行なわれていた試合をどうしても観たかったのだが、手持ちの金は入場料に1ドル足りない。そこで彼はクイン・クロージャーという見知らぬ男性に声をかけ、不足分を借りた。2年後、彼はクロージャーを訪ねて1ドルを返すのだが、それ以来、クロージャー家はボウエンにとって本物の家庭のような場所になったのだ。
どうしようもない実父が、唯一息子に残したのはアスリートとしての才能だった。ブルース・シニアはプロにこそなれなかったが、ロサンゼルス界隈では名の知れたバスケットボール選手だった。従兄弟のライアンもMLBの投手で、通算17勝をあげている。ボウエン自身も当初は野球をしていたが、身長が2メートルまで伸びたことで、バスケットを選択した。
カリフォルニア州フレズノのエディソン高校ではスター選手として活躍したものの、有力大学からは声がかからなかった。そこで一計を案じた彼は、周辺地域の大学に片っ端から電話をかけまくる。
「ボウエンという、ディビジョンIでも通用する選手がいるんだが」。低い声音でコーチになりすまし、自らを売り込んだところ、カリフォルニア大フラートン校にもぐり込むことができたのである。
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