NBA

「試合後、深夜3時に就寝し、翌朝8時に授業へ…」アメリカで文武両道を貫いた渡邊雄太が日本の学生アスリートへ伝えたいこと

ダンクシュート編集部

2020.06.10

渡邊雄太が自身のアメリカでの経験を踏まえ、日本の学生アスリートたちへメッセージを送った。(C)Getty Images

 6月4日、NBAメンフィス・グリズリーズと2WAY契約を結ぶ渡邊雄太が、音声サービス「NowVoice」で日本の学生アスリートへメッセージを送った。

「NowVoice」はサッカー元日本代表の本田圭佑が今年4月に立ち上げた定額制の音声サービスで、アスリートをはじめとした各界のトップランナーの"本音の声"を届けるというもの。初回は2週間無料で視聴でき、その後は月額990円(税込)で、スマートフォンやタブレット、パソコンなどから楽しむことができる。第1弾メンバーである渡邊は第3回目の配信で「Student-Athletes」と題し、自身のアメリカでの体験談を基に、スポーツと学業を両立することの大切さを語った。

「アメリカで大学に通いながらスポーツをする生徒のことをStudent-Athletes(ステューデント・アスリート)と言います」。そう切り出した渡邊は、「この言葉の大事な部分はStudentがAthletesよりも先にきている部分です。学生なんだから学業をまずは頑張りなさいというメッセージが込められている」とし、日本とアメリカのシステムの違いについて言及した。

 アメリカのNCAA(全米大学体育協会)では、生徒は一定の学業成績を修めなければ部活動を行なうことができず、それはのちにプロ入りするようなスター選手も例外ではない。香川県の尽誠学園高からアメリカのプレップスクールを経て、ジョージ・ワシントン大に進学した渡邊も、まったく英語を話せなかったことから当初は周囲から渡米を反対された。実際、入学後は両立に苦労したようで、シーズン中には片道4時間かかるニューヨークでの試合から帰宅し、深夜3時過ぎに就寝後、翌朝8時に授業に出ることもあったという。それでも「1度も単位を落とすことはなかった」とし、学期ごとに表彰される成績優秀者にも何度か選ばれた。
 
 渡邊は「日本の大学には行っていないので、日本のシステムはよくわからないんですけど」と前置きした上で、スポーツ推薦で進学し、競技だけに打ち込む学生が多い日本の大学の現状に警鐘を鳴らした。「学生である以上は、最低限授業に出るだとか、宿題は必ず提出するだとか、そういうことはやってもらいたい。アスリートでいられる期間は限られていて、その後のセカンドキャリアも長くなってくる。勉強がどのように役立つかは人によると思うんですけど、勉強していて損になることはない」と、両立することの大切さを説いた。

 そんな渡邊にとって、いよいよ"本職"を披露する機会が巡ってくる。NBAは現地7月31日より、フロリダ州オーランドにて22チームでのシーズン再開が決定。ウエスタン・カンファレンス8位のグリズリーズにとっては、3年ぶりのプレーオフがかかった重要な戦いとなる。渡邊は6月8日、プレスリリースで再開後の意気込みを語った。

「NBAから正式にシーズン再開の発表があり、非常に嬉しく思っております。シーズン中断から約3か月が経ちましたが、チームトレーナーのアドバイスを基に室内トレーニングでも工夫しながら今できることに集中した甲斐もあり、中断前よりも肉体的に改善できた部分も多くありました。再びファンの皆様の前でプレーができることを非常に楽しみにしておりますし、メンフィス・グリズリーズの一員としてまずはプレーオフ進出を目指して頑張っていきたいと思っておりますので、引き続き応援よろしくお願いします」

 文武両道を貫き、日本人2人目のNBAプレーヤーとなった男の次なる目標は、日本人初のプレーオフ出場。渡邊の新たな挑戦から目が離せない。

構成●ダンクシュート編集部

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