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ジャバーの人生を変えたマジックとの出会い。当初は疎ましく思っていたが…【NBAレジェンド列伝・後編】

出野哲也

2020.08.19

マジック(左)のレイカーズ入団が、ジャバー(右)の大きな転機になった。(C)Getty Images

 NBAトップクラスの実力を持ちながら、チームで浮いた存在となっていたジャバーだが、79年にマジック・ジョンソンがレイカーズに入団して以降、彼の人生は変わり始める。当初、ジャバーはマジックを疎ましく思っていた。陽気で社交好き、常に笑顔を絶やさないマジックは、自分とは正反対の性格だったからだ。79-80シーズンの初勝利を自身のシュートで決めた時も、喜んで抱きついてきたマジックを「あと81試合もあるんだぞ」とたしなめた。

 マスコミは両者の不仲説を書きたて、実際に2人の間に会話はほとんどなかった。だが、決して仲が悪かったわけではないとジャバーは言う。「ジェネレーション・ギャップはあったし、個人的な関心も異なっていたが、私たちの間には何も問題はなかった。お互いプロフェッショナルだったし、嫉妬することもなかった」。
 
 何より戦力として、優秀なパサーであるマジックの加入は極めて大きかった。レイカーズ移籍後のジャバーは、個人成績がチームの成功に結びつかず、優勝はおろかファイナルにすら一度も進めなかった。「アービン(マジック)が入る前もいいチームだったが、完璧ではなかった。アービンの加入で、パズルの最後のピースが埋まったんだ」。ロバートソン以来初めて、信頼に足る相棒を得たジャバーは、この年最多記録となる6度目のMVPを受賞する。

 不運にも、ファイナルでは足首の捻挫で第6戦を欠場し、優勝の歓喜の輪の中に入れなかった。ファイナルMVPは最終戦で大活躍したマジックが選ばれ、新時代の到来を予感させた。

 ただ、2年目以降のマジックは順風満帆とはいかず、非難に晒されることも多かった。そんな時に彼の後ろ盾になったのがジャバーだった。長い間チームの顔として矢面に立ってきた彼には、マジックの置かれた状況がよく理解できた。ジャバーはマジックの相談相手となり、親友とは言わないまでも信頼し合える関係になった。マジックがスポットライトを共有するようになって、精神的な余裕も生まれた。尊大で不遜な人間とのイメージは徐々に薄らぎ、チームメイトと一緒に行動する機会も増えた。