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バスケW杯

アメリカの惨敗が示した現実。W杯は個の力だけでは勝てない局面に突入した

鈴木栄一

2019.09.18

アメリカはタレント不足と組織力の低さの二重苦で、史上ワーストの7位に終わった。(C)Getty Images

アメリカはタレント不足と組織力の低さの二重苦で、史上ワーストの7位に終わった。(C)Getty Images

 2019年のバスケットボール・ワールドカップは、スペインの2度目の優勝で幕を閉じた。日本にとってはそのスペインが初の頂点に立った、自国開催の2006年以来(当時は世界選手権)3大会ぶりの出場。八村塁、渡邊雄太のNBA選手2人を擁し躍進を楽しみにする声は多かったが、5戦全敗で32か国中31位と、完膚なきまでに打ちのめされた。

 大きな躍進を果たしたチームもあれば、一方で失速したチームもいるのは勝負の世界では当然のこと。そのなかでも今大会を総括する上で最大のトピックは7位に沈んだアメリカだろう。

 史上初のワールドカップ3連覇を目指したアメリカは、NBAのトッププレーヤーが次々と参加を辞退。大会前は三軍レベルと揶揄されていたが、それでもメンバー全員がNBAでプレーする選手たち。さらにチームを率いるのはNBA屈指の名将グレッグ・ポポビッチと、苦戦はしても結局は優勝すると見られていた。だが、ワールドカップ前のトレーニングマッチでオーストラリアに敗れ、嫌な流れのまま本番を迎える。

 そして1次ラウンド2戦目のトルコ戦では、終盤に相手の4連続フリースローミスに助けられ、93-92で辛勝と不安定な戦いが続く。それでも2次ラウンドに入ると、ヤニス・アデトクンボ率いる難敵ギリシャに快勝するなど持ち直したかに思えた。しかし、準々決勝のフランス戦は、NBA屈指のセンターであるルディ・ゴベアに21得点・16リバウンドとゴール下を完全に支配され、79-89で敗れた。
 これによりアメリカは2006年から続いていた国際大会での連勝が58でストップ。精神的ショックから立ち直ることができなかったバスケ大国は、続く順位決定戦のセルビア戦も89-94で敗退。最終戦のポーランド戦は勝利したものの、史上ワーストとなる7位で大会を終えた。

 カイル・クーズマが大会直前に怪我でメンバーを外れ、1次ラウンドでジェイソン・テイタムが負傷離脱などマイナス要因もあったが、これらを考慮しても、今回のアメリカは優勝を狙えるだけのチーム力を備えていなかったことは紛れもない事実だった。

 もちろん今回の結果を受け、アメリカ代表が世界最強チームでなくなったと見るのは時期尚早だ。来年の東京五輪にレブロン・ジェームズやステフィン・カリー、ジェームズ・ハーデンといったスーパースターが出場すれば、王座奪還を果たす可能性は高い。

 とはいえ、ベストメンバーを組んでもこれまでのように圧勝できるかといえば、それは疑問だ。世界のライバルたちは確実にレベルアップし、アメリカとの差は着実に縮まっている。

 世界の列強は、長期的な視野に立ってチーム作りを行なうことで、組織としての連携、成熟度を高めているのに対し、アメリカ代表は直前合宿のみで大会に臨む。同じバスケットボールではあるが、FIBAとNBAでは似て非なるもの。これまでの“突貫工事スタイル”で勝ち続けられるほどアメリカは傑出した存在ではなくなったことが如実に証明された大会となった。
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