NBA

ジョーダンから主役を奪ったコビー。神様を本気にさせた19歳の球宴デビュー戦【コビー・ブライアント名勝負:Part.5】〈DUNKSHOOT〉

出野哲也

2021.01.26

ダンクやフェイダウェイなどジョーダンを彷彿とさせるプレーを次々と披露。最終的にウエスト最多となる18得点を叩き出した。(C)Getty Images

 2020年1月26日、世界中に衝撃を与えたロサンゼルス・レイカーズのレジェンド、コビー・ブライアントの事故死。あれから1年……。コビーの肉体は滅びたが、その勇姿はファンの心に永遠に刻み付けられている。ここでは彼の20年の激闘譜のなかから、後世に語り継ぐべき名勝負を紹介する。

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■1998年2月8日 NBAオールスターゲーム
 
 1996年にレイカーズへ入団したコビーは、1年目こそ平均7.6点にとどまったが、翌97-98シーズンは控えながら平均15.4点。1年目にダンクコンテストで優勝を飾ったオールスターの舞台に、ファン投票で選ばれ本戦に出場することになった。

 ウエストのガード部門2位の票数で、ジョン・ストックトンやジェイソン・キッドといった実力派を、高卒2年目の19歳が押しのけたのである。レイカーズの大先輩マジック・ジョンソンが持っていた、史上最年少での選出記録を更新することにもなった。しかも会場はニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンである。
 
 おふざけ半分のだらだらした展開ではなく、まだ選手たちがオールスターに真剣な態度で臨んでいた時代。ファンの注目はマイケル・ジョーダンとの対決に集まった。体型、ポジション、プレースタイル、闘争心の激しさと意志の強さ。どこを切り取っても2人が似ているのは、早い段階から話題になっていた。レイカーズHCのデル・ハリスは「最初にコビーを見た瞬間、ジョーダンを連想した。2人の相似性にはいやでも気づかずにいられない」と言い、ベテラン記者のピーター・ベクシーも「ジョーダンの強化版だ。ベストの選手になりたいと思っているし、そうなる可能性もある」と評した。

 そうした意見について感想を求められたコビーはこのように回答した。
「全然気にならないよ。俺も自分がそうなると思っているから」



 ジョーダンはオールスター期間中ずっと風邪気味で、最初は試合で全力を出すつもりはなかったという。だが試合が始まると、ずっとマークについていたコビーの放つエナジーに触発されて、気がつけば本気になっていた。試合途中のインタビューでは笑みを浮かべながら次のように語った。