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ミラー&ジャクソンが演じた“最高に魅力的な悪役”。ファンの間で永遠に語り継がれる2人のドラマ【NBAデュオ列伝|後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.04.17

ミラー(右)とジャクソン(左)が“最高に魅力的なヒール役”を演じたからこそ、1990年代のリーグが一層盛り上がったと言える。(C)Getty Images

■小憎らしい強烈な"ヒール・コンビ"が完成

 続く1994-95シーズン、PG(ポイントガード)のグレードアップを図ったブラウンは、古巣のクリッパーズからジャクソンを引っ張ってきた。非常に高い水準を求めるブラウンに認められたことこそ、ジャクソンが優れた司令塔である証だった。

「レジーのような選手と一緒にブレーできると考えただけで、とても楽しみだったね。それにチームに合流したその日から、レジーはとても親しく接してくれた。人間的にも素晴らしいということはすぐにわかったよ」

 ミラーとジャクソンにはいくつもの共通点があり、親友となるのに時間はかからなかった。同い年であり、ともに信仰心が篤い。ミラーがシュートを決めた後、相手ベンチに深々と敬礼して皮肉れば、ジャクソンは得点するたびに肩を震わす"ジャクソン・ジグル"を見せ、対戦相手を愚弄するようなパフォーマンスを得意としていた点も似通っていた。
 
 そして2人には誰よりも強い、ニックスへの対抗心があった。「俺よりニックスを嫌いなヤツがいるとしたらマークだね」とミラーが認めるほど、かつて自分を捨てたチームへのジャクソンの恨みは強かった。

 レギュラーシーズンを順当に勝ち進んだペイサーズは、プレーオフのカンファレンス準決勝でニックスとぶつかった。そしてその初戦、ミラーは再び奇跡を起こす。残り時間わずかの場面で連続して3ポイントを決め、たった8.9秒の間に8得点を入れて逆転勝ちを収めたのだ。この試合をきっかけに優位に戦いを進めたペイサーズは、4勝3敗で見事にニックスを下したのだった。

 翌1996年はミラーをケガで欠き、プレーオフ1回戦で敗退。シーズン終了後、ジャクソンはジェイレン・ローズとの交換でデンバー・ナゲッツへトレードされた。しかしナゲッツで平均12.3アシストの大活躍を見せると、シーズン半ばで再びペイサーズに帰還。最終的には平均11.4アシストをマークし、ストックトンの10年連続アシスト王を阻んで初タイトルに輝いた。
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