FIBAランキング62位は今年のワールドカップに出場した32か国中31位ながら、8月31日に地元開催のフィリピンを87-68で下すと、9月2日のアンゴラ戦も101-78で快勝。この試合ではカリーク・ジョーンズ(シカゴ・ブルズ)がゲームハイの26得点、15アシスト、マリアル・シェヨックが18得点、ヌニ・オモットが17得点、昨季ロサンゼルス・レイカーズに所属していたウェニエン・ガブリエルが15得点、10リバウンド、6ブロックと躍動した。
1次ラウンドを突破することはできなかったが、南スーダンはグループMでトップの3勝2敗と勝ち越して大会を終了。アフリカ大陸のチームでトップの戦績を残したことで、2024年パリオリンピックの出場権も手にした。これは同国史上初の快挙であり、来夏にはさらなる大舞台でプレーすることとなる。
この南スーダンの快進撃を陰で支えてきたのは、元NBA選手でオールスターに2度選ばれた実績を持つルオル・デン(元ブルズほか)。南スーダンで生まれ、内戦から逃れるべく、3歳の頃にエジプトへ移住したデンは、南スーダンとイギリスの二重国籍に加え、アメリカの永住権も持ち、バスケットボール連盟の会長就任からわずか3年で初のオリンピック出場を決めたのだから喜びは格別だった。
「信じられないストーリーだ。これは南スーダン共和国、アフリカだけでなく、世界にとってもアンダードッグ(勝ち目のない者たち)によるストーリーになった。これは大部分の人たちが心を通わせることができる上質なストーリーだ。そしてバスケットボールを超越した、唯一無二の成果なんだ」
そしてデンの長年の友人で、今季からヒューストン・ロケッツのアシスタントコーチへ就任したロイヤル・アイビーHC(ヘッドコーチ)の存在も見逃せない。ガードとしてNBAで10シーズンをプレーした41歳は、2021年5月に南スーダンの指揮官へ就任。当初はコンクリートのフロアで練習するという厳しい環境のなか、見事チームをオリンピックまで導いた。
「自分はまだまだ小さいんだなと感じた旅路になっているね。何度か心を痛めたし、浮き沈みも経験してきた。そして今はすごくいい気分だ。ほんの1年前、我々は外で鷲が飛び交う中で練習し、浸水した(室内の)コートでも練習していたんだ。それが今ではフィリピンの大勢のファンの前でプレーすることができている。今の私はこれ以上ないほど幸せだよ」
アイビーがそう口にしたとおり、南スーダンはここ数年で急激に成長したと言えるだろう。
それは「夢が叶ったんだ」というオモットの言葉からも伝わってくる。
「僕らは2011年に独立国になった。これまで、自分たちがこの位置にいることができるなんて、誰も想像できなかったし、夢にも思っていなかった。そして今、僕らは国旗を掲げてオリンピックという舞台に立つチャンスを得た。もうすべてが信じられないよ。間違いなく、これは最も、僕の中で最もエモーショナルな日のひとつになったよ。この一員になることができて、僕はものすごく恵まれているんだなと感じている」
南スーダンにとって約1年後に控えるオリンピックは、国旗を掲げてトップを目指して競い合う素晴らしい機会となるに違いない。
文●秋山裕之(フリーライター)
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