NBA

ジョーダンの地位を確固たるものにした93年ファイナルで勝敗を分けた「約束事」とは?

北舘洋一郎

2020.01.03

ジョーダンは91~93年に3連覇を達成。圧倒的な個人技に加え、仲間との結束を強めたことで無敵のチームを作り上げた。(C)Getty Images

「このリーグのいいところは自由競争なことだ」――かつてマイケル・ジョーダンはNBAについてこう語っていた。史上最強のスーパースターとして君臨したジョーダンでさえ、「結果さえ残せば誰にでもチャンスのあるのがNBA。だが、結果を残せなければ『昔はすごかった』と直ちに過去のものへと置き去りにされてしまう」と、常に危機感を感じながらプレーしていたのだ。

 実際、ジョーダンもキャリア7年目に初めてチャンピオンリングを手にするまではNBAの激しい競争の渦に巻かれていた。

「あの頃は毎試合勝てるという確信などどこにも無かった。NBAに入って3、4シーズンは常に1対5でオフェンスをしているかのようにプレーしていたし、それがその時のベストな選択肢だと心のどこかで思っていた。ただただ自分の激しい負けず嫌いの性格が前に前に出てしまっていた。しかしそれで結果が出るということはなかったね」とジョーダンは言う。
 
 当時のジョーダンはメディアに対してフレンドリーで、試合後のインタビューでも長い時間を割いて多くのことを語ってくれていた。その中でジョーダンの言う「結果を残す」=「チームの勝利」という考え方に大きく変わったのではと感じたのが、1993年。60年代にボストン・セルティクスが達成した8連覇から27年の歳月を経てスリーピート(3連覇)の偉業を成し遂げた頃だ。

 3度目の優勝を決めたファイナルの相手はフェニックス・サンズ。「優勝を狙う気がないなら俺をトレードに出せ」と移籍を志願したチャールズ・バークレーを獲得し、一気にウエストの頂点まで駆け上がった強敵だった。このシリーズに望む前にジョーダンは相棒のスコッティ・ピッペンとホーレス・グラントにこう話したという。

「レギュラーシーズンは勢いでも押し切れるがプレーオフ、そしてファイナルとなればそうはいかない。守るべき約束事を試合の最後までどれだけ貫き通せるかだ。それはぶれない精神力と集中力にかかっている」
 
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チームが結束するためにジョーダンが重視したこととは