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NBA

“ジョーダンズ・ブルズ”で3連覇に貢献。生涯で8つのチャンピオンリングを手にしたスティーブ・カーの栄光のキャリア【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.02.08

ブルズでは5シーズンで平均8.2点を記録し、3連覇に貢献。97年のファイナルでジョーダンのパスから沈めた決勝弾は、リーグ史に残る一撃だ。(C)Getty Images

ブルズでは5シーズンで平均8.2点を記録し、3連覇に貢献。97年のファイナルでジョーダンのパスから沈めた決勝弾は、リーグ史に残る一撃だ。(C)Getty Images

 瀬戸際のカーにとって転機となったのは、ブルズへの移籍だった。彼らの戦術であるトライアングル・オフェンスは、カーのプレースタイルに完璧にフィットしたのだ。

「トライアングル・オフェンスのおかげで、僕はNBAで生き残ることができた。ポイントガードとか、シューティングガードといったポジションに縛られるのではなく“プレーヤー”になれたんだ」

 マイケル・ジョーダンが1回目の引退期間中だった93-94シーズン、カーは出場時間(24.8)と平均得点(8.6)で自己最高の数字をマーク。翌年はリーグ新記録となる3ポイント成功率52.4%で2度目のタイトルを獲得すると、続く95-96シーズンも51.5%を記録。ジョーダンが完全復帰して72勝をあげたブルズの重要なベンチメンバーとして機能した。

「先発メンバーが良ければ、ベンチの仕事も楽になる。何をすればいいか、役割がはっきりするからね。ローテーションが決まらなくて、コーチがいろんなことを試さなければいけないようだと、ベンチメンバーも力を発揮できないんだ」
 
 シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)と対戦した96年のファイナルでは、自慢の3ポイントが22本中4本しか決まらず、持ち味を発揮できたとは言えなかった。それでも「この年が僕のキャリアで一番楽しいシーズンだった」とカーは振り返っている。

 翌年もブルズは69勝をあげたが、ファイナルではカール・マローンとジョン・ストックトン率いるユタ・ジャズを相手に苦戦を強いられる。2勝2敗で迎えた第5戦は、高熱をおして出場したジョーダンの奮闘で何とか勝利を収めるも、第6戦も一進一退の展開となり、86対86の同点で最終局面を迎えた。

 そして残り時間28秒、大観衆の視線が注がれるなか、ジョーダンは冷静に状況を判断していた。

「タイムアウトの時、スティーブに『ストックトンが俺のカバーに来るから、用意しておけ』と言ったんだ。彼は『わかった。必ず決めてみせる』と言ったよ」

 タイムアウト後、カーからスコッティ・ピッペン、そしてジョーダンにボールが渡った時、彼の読み通り、ストックトンがカーのマークから離れてヘルプディフェンスに来た。ジョーダンはジャンプシュートを打つと見せかけ、完全にフリーになっていたカーにパスを送る。ゴール正面から放ったカーの正確なシュートは、ショットクロックを1秒残してゴールに吸い込まれた。

「僕がシュートを決められたのも、すべて彼がディフェンスを引きつけてくれたからさ」

 カーはジョーダンに賛辞を送ったが、土壇場でも落ち着いて決めてくれる確信があったからこそ、ジョーダンも一切の躊躇なく、カーに最後のシュートを託せたのだ。
 
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