カリーム・アブドゥル・ジャバー（当時は改名前のルー・アルシンダー）が優勝に導いた1971年以来、49年もの間、ミルウォーキー・バックスはリーグ制覇はおろか、ファイナル進出もできなかった。しかし、千載一遇のチャンスが今まさにやってきている。2013年ドラフトの１巡目15位で獲得した逸材、ヤニス・アデトクンボの加速度的な成長とともに、チームはここ数年で一気にリーグトップクラスの強豪球団へとジャンプアップした。

「俺のキャリア２年目から３シーズン半にわたってヘッドコーチ（ＨＣ）を務めたジェイソン・キッド（現ロサンゼルス・レイカーズ・アシスタントコーチ）に、成長へのきっかけをたくさんもらった。自分の持っている才能を、このリーグで開花させるにはどうしたらいいのかを学んだんだ」とアデトクンボは言う。

　ＮＢＡ入りした段階で、アデトクンボの身体能力は群を抜いていた。211cmの恵まれたサイズに加え、機動力と跳躍力も抜群。ボールをリングに叩き込む能力はすでに完成されていて、あとはアウトサイドシュートを決める技術さえ会得すれば、間違いなくリーグ最強のフォワードになることは誰もが予測できた。
  　2018年からバックスの指揮官を務めるマイク・ブーデンホルザーは、アデトクンボについて「過去にＮＢＡで活躍した偉大な選手たちは、卓越した身体能力を持ち、その上でスキルと勝ち方を身につけていった。その条件をヤニスは十分に満たしているし、今も進化の途中にある」と称賛。また現役最強選手のレブロン・ジェームズ（レイカーズ）にも「自分を一回り上回る強靭さ、そして自分と同じぐらいの勝利への貪欲さを持つ」と褒められるなど、選手やコーチから高く評価されている。

　しかし、コビー・ブライアント（元レイカーズ）は違った。彼はアデトクンボにアドバイスを求められた際に、こう話したそうだ。

「ヤニス、君はナイスガイだ。誰からも愛され、マジック・ジョンソン（元レイカーズ）も持っている“誰をも笑顔にさせる才能”を神から授かって生まれてきた。それはとても幸福なことだが、もし君がチャンピオンになりたいと思っているなら、時には鬼にもならなければいけない。チームを勝利に導くリーダーには、チームメイトと言い争う場面が出てくる。そういうことがもしチームにないとするなら、それは表面的な関係しか構築できていない。ぶつかり合うことを繰り返して、お互いが理解し合い、チームの絆は強くなっていくんだ」