瀬戸際のカーにとって転機となったのは、ブルズへの移籍だった。彼らの戦術であるトライアングル・オフェンスは、カーのプレースタイルに完璧にフィットしたのだ。
「トライアングル・オフェンスのおかげで、僕はNBAで生き残ることができた。ポイントガードとか、シューティングガードといったポジションに縛られるのではなく“プレーヤー”になれたんだ」
マイケル・ジョーダンが1回目の引退期間中だった93-94シーズン、カーは出場時間(24.8)と平均得点(8.6)で自己最高の数字をマーク。翌年はリーグ新記録となる3ポイント成功率52.4%で2度目のタイトルを獲得すると、続く95-96シーズンも51.5%を記録。ジョーダンが完全復帰して72勝をあげたブルズの重要なベンチメンバーとして機能した。
「先発メンバーが良ければ、ベンチの仕事も楽になる。何をすればいいか、役割がはっきりするからね。ローテーションが決まらなくて、コーチがいろんなことを試さなければいけないようだと、ベンチメンバーも力を発揮できないんだ」
シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)と対戦した96年のファイナルでは、自慢の3ポイントが22本中4本しか決まらず、持ち味を発揮できたとは言えなかった。それでも「この年が僕のキャリアで一番楽しいシーズンだった」とカーは振り返っている。
翌年もブルズは69勝をあげたが、ファイナルではカール・マローンとジョン・ストックトン率いるユタ・ジャズを相手に苦戦を強いられる。2勝2敗で迎えた第5戦は、高熱をおして出場したジョーダンの奮闘で何とか勝利を収めるも、第6戦も一進一退の展開となり、86対86の同点で最終局面を迎えた。
そして残り時間28秒、大観衆の視線が注がれるなか、ジョーダンは冷静に状況を判断していた。
「タイムアウトの時、スティーブに『ストックトンが俺のカバーに来るから、用意しておけ』と言ったんだ。彼は『わかった。必ず決めてみせる』と言ったよ」
タイムアウト後、カーからスコッティ・ピッペン、そしてジョーダンにボールが渡った時、彼の読み通り、ストックトンがカーのマークから離れてヘルプディフェンスに来た。ジョーダンはジャンプシュートを打つと見せかけ、完全にフリーになっていたカーにパスを送る。ゴール正面から放ったカーの正確なシュートは、ショットクロックを1秒残してゴールに吸い込まれた。
「僕がシュートを決められたのも、すべて彼がディフェンスを引きつけてくれたからさ」
カーはジョーダンに賛辞を送ったが、土壇場でも落ち着いて決めてくれる確信があったからこそ、ジョーダンも一切の躊躇なく、カーに最後のシュートを託せたのだ。
「トライアングル・オフェンスのおかげで、僕はNBAで生き残ることができた。ポイントガードとか、シューティングガードといったポジションに縛られるのではなく“プレーヤー”になれたんだ」
マイケル・ジョーダンが1回目の引退期間中だった93-94シーズン、カーは出場時間(24.8)と平均得点(8.6)で自己最高の数字をマーク。翌年はリーグ新記録となる3ポイント成功率52.4%で2度目のタイトルを獲得すると、続く95-96シーズンも51.5%を記録。ジョーダンが完全復帰して72勝をあげたブルズの重要なベンチメンバーとして機能した。
「先発メンバーが良ければ、ベンチの仕事も楽になる。何をすればいいか、役割がはっきりするからね。ローテーションが決まらなくて、コーチがいろんなことを試さなければいけないようだと、ベンチメンバーも力を発揮できないんだ」
シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)と対戦した96年のファイナルでは、自慢の3ポイントが22本中4本しか決まらず、持ち味を発揮できたとは言えなかった。それでも「この年が僕のキャリアで一番楽しいシーズンだった」とカーは振り返っている。
翌年もブルズは69勝をあげたが、ファイナルではカール・マローンとジョン・ストックトン率いるユタ・ジャズを相手に苦戦を強いられる。2勝2敗で迎えた第5戦は、高熱をおして出場したジョーダンの奮闘で何とか勝利を収めるも、第6戦も一進一退の展開となり、86対86の同点で最終局面を迎えた。
そして残り時間28秒、大観衆の視線が注がれるなか、ジョーダンは冷静に状況を判断していた。
「タイムアウトの時、スティーブに『ストックトンが俺のカバーに来るから、用意しておけ』と言ったんだ。彼は『わかった。必ず決めてみせる』と言ったよ」
タイムアウト後、カーからスコッティ・ピッペン、そしてジョーダンにボールが渡った時、彼の読み通り、ストックトンがカーのマークから離れてヘルプディフェンスに来た。ジョーダンはジャンプシュートを打つと見せかけ、完全にフリーになっていたカーにパスを送る。ゴール正面から放ったカーの正確なシュートは、ショットクロックを1秒残してゴールに吸い込まれた。
「僕がシュートを決められたのも、すべて彼がディフェンスを引きつけてくれたからさ」
カーはジョーダンに賛辞を送ったが、土壇場でも落ち着いて決めてくれる確信があったからこそ、ジョーダンも一切の躊躇なく、カーに最後のシュートを託せたのだ。