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NBA

「彼が素晴らしい選手であることは間違いない。しかし…」元フランス代表指揮官が語る、エンビード帰化問題の舞台裏<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2025.07.23

エンビード(右)はフランス代表入りの噂もあったが、最終的にアメリカ代表でのプレーを選んだ。(C)Getty Images

エンビード(右)はフランス代表入りの噂もあったが、最終的にアメリカ代表でのプレーを選んだ。(C)Getty Images

 2024年のパリ五輪開催を前に、フランスのバスケットボール連盟は、ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)にフランス国籍を取得させ、レ・ブルーことフランス代表のメンバーに加えることを画策した。

 しかし、当時のチームでHC(ヘッドコーチ)を務めていたヴァンサン・コレは、彼の加入を望んではおらず、最終的にエンビードがアメリカ代表を選んだ時には、「正直なところ、安堵した」と、欧州のバスケサイト『BasketNews』に明かした。

 今月上旬、リトアニアの首都ヴィリニュスで行なわれたバスケットボールに特化したカンファレンス、B8サミットに出席していたコレは、「我々には必要のないことだった」と当時の思いを率直に語った。

 2009年から昨年のパリ五輪まで、15年にわたってフランス代表で指揮を執り、13年のユーロバスケット優勝や、東京、パリと五輪での2大会連続銀メダルなど、国際大会で数多くの功績を残した名将は、代表のチーム作りについて次のように述べた。

「それ(帰化選手を採用すること)を必要とするチームがあることは理解できる。しかし私には、それがフェアなやり方だとは思えない」

 さらにコレは、帰化の話は元々エンビード自身から持ちかけられたものであり、指揮官である彼としては必要性を感じていなかったが、上層部が前向きに進めていたため反論できなかったと、当時の裏事情についても打ち明けている。
 
「大臣クラスの、さらに上層部からの指示だったから、私には(反論)できなかった。オリンピックが自国フランスで開催されることもあり、彼らはできる限り良い結果を出すために、何か保険が必要だと考えたのだと思う。しかし私としては、それが奏功するかは疑問だった」

 もちろんコレも、23年にNBAでMVPに輝いているエンビードの実力は十分に理解していた。

「彼が素晴らしい選手であることは間違いない。フランス語を話せるし、フランスとのつながりもある。しかしチームスピリットという観点から見れば、我々のバスケットボールにとっては(彼の加入は)あまり望ましいことではないと思った」

 個人レベルでの戦力増加よりも、重視すべきはチームスピリッツやケミストリーという考えは選手たちも同様で、エバン・フォーニエ(元ニューヨーク・ニックスほか)は、「ジョエルを非難しているわけではないが、自分は縁もゆかりもない国のためにプレーするのはどうかと思う」とチームワークが乱れることを懸念する発言をしていた。

 加えてフランス代表には、大黒柱のルディ・ゴベア、そしてヴィクター・ウェンバンヤマの参加も早い段階で決まっており、代表歴の長いヴァンサン・プワイエ、マティアス・ルソーと、十分にビッグマンが揃っていた。
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