現時点では２人とも罪に問われてはいないが、ポーターJr.は、NFLボルティモア・レイブンズのスター選手マーク・アンドリュースが、致命的なキャッチミスを犯したことで殺害の脅迫を受けたことを例に挙げつつ、選手たちの状況を力説。

「事態はどんどん悪化している。時には殺害予告を受けることもある。もし自分が良いプレーをし過ぎたら、アンダー（低いスタッツ）に賭けていた人たちにとっては問題だし、その逆もある。結局どっちにしても誰かの金をダメにしてしまうんだ。こんな状況はクレイジーだよ」

　選手全員が、「自分のパフォーマンスが誰かの懐具合を左右している」ことを気にしてプレーしているわけではないだろう。身内に関与した者がいたポーターJr.がより敏感になっているのは確かだが、実際にギャンブルの対象となったばかりにアスリートが命を奪われた悲しい事件もある。

　それに、試合中には観客席から選手たちの元まで、声が聞こえてくるらしい。

「客席から『マイク！　あともう１本スリー決めてくれ！』とか、『あと５点必要なんだよ！』とか聞こえてくるんだ。もはや試合は純粋に楽しむためのものじゃなくなってる。金儲けの対象として見ている人たちもいるんだ」
  　ポーターJr.の仲間内にも、スポーツ賭博で生計を立てようとしていた者がいたらしい。

「でも実際には、儲けてる人より負けてる人の方がはるかに多い。勝てる瞬間なんてほんのわずかだ。だから言いたい。ギャンブルをしたいなら、ベガスやカジノに行けと。今はすべてがオンラインになっているから厄介なんだ」（ポーターJr.）

　合法のスポーツベッティングの会社は監査機関も徹底していて、むしろ違法行為の摘発に役立っていたり、多くの競技のプロリーグでスポンサーになったりもしている。NBAのアダム・シルバー・コミッショナーも健全化に真摯に取り組むことを約束しているが、選手たちのパフォーマンスが賭けの対象となっている現実には変わりはない。

　こうした状況にいかに対応するかも、プロアスリートに求められる精神力なのだろう。

文●小川由紀子

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