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NBA

相次ぐケガでキャリアが一変した“ジョーダンの後継者”。グラント・ヒルが40歳まで現役を続けられた理由

北舘洋一郎

2020.04.08

2007年のサンズ移籍がキャリアの転機に。新天地では健康体を維持し、ロールプレーヤーとしてチームに不可欠な存在となった。(C)Getty Images

2007年のサンズ移籍がキャリアの転機に。新天地では健康体を維持し、ロールプレーヤーとしてチームに不可欠な存在となった。(C)Getty Images

 彼女は思いをただストレートに話しただけだったのだが、ヒルはこう答えたと言う。

「レブロンとは友達だよ。今度、お父さんはレブロンとマッチアップするから、試合を見に来て、その時にレブロンに会おう」

 ヒルは、娘に父の仕事はプロのバスケットボール選手で、今ではもうレブロンと張り合うような選手ではないかもしれないが、それでもやれることはある。娘にその姿を見せたいという思いがきっかけでバスケットに打ち込めるようになったのだ。サンズでの4シーズンは平均12.1点、4.7リバウンド、2.5アシストと際立った数字ではなかったものの、これまで培った経験を生かしてディフェンダーとして新境地を開拓。チームに無くてはならない存在となった。

 同じ時期にサンズのゼネラルマネージャーを務めていたスティーブ・カー(現ゴールデンステイト・ウォリアーズ・ヘッドコーチ)はヒルについて、「ウォリアーズに例えればヒルはアンドレ・イグダーラのような仕事をこなしてくれていた。NBAではベテランしか見えないものがある。それはチームを勝利に導くために重要なピースであり、そういった有能な人材はチーム構成を考える上で不可欠だ」と高く評価していた。

 またヒルの友人であるティム・ダンカン(現サンアントニオ・スパーズ・アシスタントコーチ)は言う。
 
「選手という生き物は変わっている部分があって、自分よりも実績があったり、同等のレベルの選手からのアドバイスは素直に聞き入れる。一方で、その選手が格下であれば、話を聞くふりをしてまったく聞いていなかったりするんだ。本当は良くないことだが、競争心の旺盛なNBA選手は弱肉強食の世界に身を置いている。だからこそ様々な経験をしたヒルのような選手がチームには必要なんだ。スパーズで言えばキャリア後半のマヌ・ジノビリがそんな存在だった」

 最終的に40歳まで現役を続けたヒルは、キャリア平均16.7点、6.0リバウンド、4.7アシストという数字を残し、2018年にバスケットボール殿堂入りを果たした。

 ヒルは愛娘にレブロンとのマッチアップを見せることができ「パパとしての威厳は守れたよ」と冗談交じりに話していたが、何よりも家族にとって大きな財産となったのは、自分がプレーをする姿を見て娘たちはスポーツが大好きになり、いまでもスポーツに取り組んで組んでいることだと言う。

文●北舘洋一郎

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