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NBA

「ブルース・ボウエンには誰だってなれる」たゆまぬ努力で名声と悪名を轟かせた守備職人のキャリア【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.04.09

ボウエン(右)にとってブラウン(左)は「祖父みたいな存在」だという。(C)Getty Images

ボウエン(右)にとってブラウン(左)は「祖父みたいな存在」だという。(C)Getty Images

 ボウエンにはもうひとつ、強力な武器があった。両コーナーにから放たれる正確な3ポイントシュートである。2002-03シーズンは229本中101本を沈め、成功率44.1%は堂々のリーグトップ。ただ面白いのは、フリースローはまったくの苦手で、この年の成功率が40.4%に過ぎなかったこと。最も簡単なシュートが満足に決まらないのに、最も難しいシュートは得意というあたりからも、ボウエンがいかにユニークな選手だったかがわかるはずだ。

 ボウエン在籍時に、スパーズは2003、05、07年と3度のリーグ制覇を成し遂げる。その原動力がティム・ダンカンやマヌ・ジノビリ、トニー・パーカーであったのは誰もが認めるところだが、彼らを陰で支えていたのがボウエンの堅実なディフェンスだったことも、また誰もが知っていた。

「最高の選手たちを毎晩ガードし続けるなんて、誰にもできることじゃない。しかも彼は才能じゃなく、意志の力とハードワークでそれを成し遂げたんだ」(グレッグ・ポポビッチHC)

 初優勝を別にすれば、最も印象に残っているのはデトロイト・ピストンズを倒した2005年だという。

「相手のコーチがラリー・ブラウンだったからね。俺がフィラデルフィア・セブンティシクサーズにいた頃、彼は自宅に招待してくれたり、感謝祭のディナーにも呼んでくれたりした。そんなコーチはほかにはいなかった。俺にとって祖父みたいな存在の人に勝てたのが、何よりも嬉しかった」
 
 現役引退後はESPNで解説の仕事を始め、毎回蝶ネクタイで登場して話題を呼んでいる。「ピエロみたいだって言われたりもするけれど、他人と同じことをしてもつまらないから」という理由が、いかにもボウエンらしい。

 2013年3月には、スパーズ時代の背番号12が永久欠番となった。通算の平均得点が6.1点に過ぎないバイプレーヤーが、ジョージ・ガービンやデイビッド・ロビンソンら偉大な選手たちと肩を並べたのだ。努力に優る天才なし――。それを証明してみせたボウエンは次のように語っている。

「どんな人間にも長所はある。それを生かすか殺すかは自分次第。俺にはトニーの速さも、マヌの創造性も、ティムの才能もなかったけれど、授けられた能力は出し尽くした。トニー、マヌ、ティムにはなれなくても、ブルース・ボウエンには誰だってなれるんだ」

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2013年1月号掲載原稿に加筆・修正

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