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NBA

宿敵レジー・ミラーとの契約、レイカーズの至宝コビー獲得……名門ニックスの“未遂”に終わった取引

ダンクシュート編集部

2020.06.10

キャリア晩年にコビーは恩師ジャクソン(左)が球団社長を務めるニックス移籍を匂わせる発言をしたが、当然ながらトレードは実現しなかった。(C)Getty Images

キャリア晩年にコビーは恩師ジャクソン(左)が球団社長を務めるニックス移籍を匂わせる発言をしたが、当然ながらトレードは実現しなかった。(C)Getty Images

 90年代、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズがリーグを席巻。91年から5回プレーオフで対戦し、4回ブルズの前に屈したニックスは、戦力アップに余念がなかった。

 迎えた96年のオフ、フロントが目を付けたのはインディアナ・ペイサーズの大黒柱レジー・ミラー。リーグ史に残るクラッチシューターは、プレーオフで何度もニックスを奈落の底に突き落としてきた憎き相手であり、ファンにとって目の上のタンコブ的な存在であった。しかし、ジョーダンズ・ブルズの高い壁を越えるには思い切ったプランが必要だった。

 首脳陣はこのミラーとアラン・ヒューストン(当時デトロイト・ピストンズ)のどちらかの獲得を狙っていた。そして96年のアトランタオリンピック期間中に、チームはヒューストンとの契約を発表。アメリカ代表のメンバーだったミラーはアトランタのホテルでこのニュースを知り、代表でチームメイトだったピストンズのグラント・ヒルに「お前のところの男(ヒューストン)は俺の計画を台無しにした」と言ったという。

 ミラーは制限なしのフリーエージェントで、ニックスと契約することができた。それでもペイサーズ側が何の見返りもなくライバル球団にエースを送ることは考えにくい。もし実現していたら“禁断の移籍”としてインディアナのファンは怒り狂っただろう。
 
 コビー・ブライアントは20年間ロサンゼルス・レイカーズ一筋で過ごし、5度の優勝に導いたスーパースターだが、キャリアの晩年(13~16年)はケガに泣かされ、レイカーズも優勝候補はおろかプレーオフとも無縁の球団に転落した。これによりコビーは、フロントがチームを1から作り直すことを危惧していたという。

 それはコビーとレイカーズの“別れ”を意味していた。チームが再スタートを切るには、コビーの莫大なサラリーを処理する必要があったからだ。

『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者は、レイカーズから放出されることをコビー自身が信じていたと回顧した。ウォジナロウスキー記者は「それは絶対に起こらない。(もしコビーが放出されたら)レイカーズファンは街を焼き払うだろう」と移籍を否定したが、コビーは「彼ら(フロント)はそれを望んでいると思う」と主張。

 さらにコビーは「俺はニューヨークに行き、フィル(ジャクソン/当時ニックスの球団社長)のためにプレーする」と語ったという。

 今振り返ればコビーが偏執的だったのだろう。当然ながらトレードは行なわれず、コビーは生涯レイカーとして引退。またウォジナロウスキー記者が述べたように、もしレイカーズのフロントがチームの至宝であるコビーとの決別を選択した場合、ロサンゼルス市民は暴動を起こしていたかもしれない。

 今年2月に経済誌『Forbes』が発表したNBA全30チームの資産価値ランキングでニックスはレイカーズやボストン・セルティックスを抑え、4年連続で1位に輝いた。しかし、それと反比例するように近年はリーグ下位に低迷。優勝から50年近く遠ざかっている名門が復活を果たす日はいつになるだろうか。

構成●ダンクシュート編集部

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