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NBA

「自分は少し遅すぎた」セルビアの天才パサー、テオドシッチが導き出した“欧州選手がNBAに挑戦するベストタイミング”とは?

小川由紀子

2020.07.06

故障を抱えながらも1年目に平均9.5点、4.6アシストを記録。チームはプレーオフを逃したが、自身が出場した試合では13もの貯金を作った。(C)Getty Images

故障を抱えながらも1年目に平均9.5点、4.6アシストを記録。チームはプレーオフを逃したが、自身が出場した試合では13もの貯金を作った。(C)Getty Images

 試合後にアメリカンバスケの印象を聞かれると、「これは練習試合だから何とも言えない。スピードはちょっと速かったけれど思ったほどでもなかった」と、流暢な英語でひょうひょうと話している。

 ところが、開幕戦で公式戦デビューを飾った矢先の2戦目に足底筋膜を痛め、12月中旬まで約1か月半離脱する事態に。復帰後も痛みを引きずってはいたが、それでも45試合に出場。うち36戦で先発し、平均9.5点、4.6アシスト、3ポイント成功率は37.9%と、万全なコンディションではないなかでも持ち前のパスセンスとシュート力を見せつけた。なにより、その年42勝40敗だったクリッパーズが、彼が出場した45試合では29勝16敗と圧倒的に白星が上回ったことも、その貢献度を象徴していた。

 テオドシッチのノールックパスはトリッキーすぎる余り味方のターンオーバーを誘発してしまうこともあったが、ピック&ロールからの展開など、彼のパスワークに合わせて動くことで、とりわけ若手選手たちのレベル向上にもつながった。
 
 そんな彼にも、ディフェンスという大きな弱点があった。それは欧州時代から言われていたことで、相手のポイントガードとマッチアップしても得点を許してしまうことが多い。ヨーロッパでそれなのだから、よりパワーとスピードで勝るNBAの選手相手では、弱点はより顕著になった。相手にディフェンスの穴だと判断されると致命傷になり得る試合終盤に、コートに立つにはリスクがあったが、本人は勝負がかかった終盤ほど気合が乗ってくる傾向があり、ドック・リバースHCにとってはジレンマだったに違いない。

 また、ムラっ気があり、凡庸な試合をする日があるかと思えば、ひとつひとつのプレーが相手の急所を突くような、キレキレのパフォーマンスを見せる日もあった。特に国際トーナメントの決勝ラウンドのような一発勝負の試合で、彼はそんな一面を発揮した。

 2010年の世界選手権(現W杯)、準々決勝のスペイン戦はまさに彼の真骨頂が炸裂した一戦だった。試合終盤、スペインの猛追にあったセルビアは残り25秒で89-89の同点に追いつかれると、たまらずタイムアウトをコール。再開後、ボールを手にしたテオドシッチは、タイミングを計るようにゆっくりとドリブルを続けると、スイッチした相手のビッグマン、ホルヘ・ガルバホサが襲い掛からんとしたまさにその瞬間、3ポイントラインのはるか後方からアーチの高いシュートを放つ。ボールがネットをすり抜けた時、残り時間は3秒。92-89でセルビアが勝利をもぎとった。
 

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