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NBA

「僕よりももっと尊敬されるべき選手が…」新人時代のグラント・ヒルが選手紹介のトリを拒否した理由

北舘洋一郎

2020.07.10

 ヒルが入団した当時、デュマースはキャリア10年目を迎えたチームの大黒柱であった。オールスター選出4回、ファイナルMVP獲得などの実績もさることながら、優れた人間性でも知られたレジェンドだけに、新人のヒルにとっては雲の上の存在だったに違いない。

 そのデュマースはタイムアウトでベンチに戻って座る時には、決まってオフィシャルに一番近い椅子に座る。かつてジェリー・スタックハウスがピストンズに移ってきたばかりの時に、何も知らないでそこに座ったら「どけ」とデュマースに言われてびっくりしたことがあったという。デュマースはピストンズに入団してからずっとその場所に座っていて、あのアイザイア・トーマスにもビル・レインビアにも、デニス・ロッドマンにも絶対に座らせなかった。デュマースにとってあの椅子はゲン担ぎだったようだ。

 また、ヒルはデュマースから教わったことで印象に残っている、ロッドマンにまつわる話も教えてくれた。
 
「NBAでは自己主張していかないとどんどん埋もれていくだけだ。ある試合で、リバウンドの時にヤツ(ロッドマン)がゴールポストに僕を叩きつけようとして押したんだ。それもボールデッドの時に。僕もやり返したんだけど、その試合の前にデュマースからロッドマンは外見がああだから強そうに見えるかもしれないけど、本当はそんなに力が強い選手じゃないから喧嘩になっても大したことにならないって聞いてたんだ。例えばという意味でのロッドマンの話なんだけど、試合前のイメージと実際は必ずしも同じではないということを学んだよ」

 当時は今以上にラフプレーが多く、乱闘も頻発していたのは、オールドファンならばご存知だろう。その中にある選手たちの個性というか、キャラクターの立った存在感というものは、もしかしたら90年代の方が今よりも話題豊富だったのかもしれない。その部分については、ヒルもこのように語っている。

「個人的な感想で言えば、今の選手たちは僕たちの頃よりも優等生が多いのは事実かもしれない。バスケットの技術や取り組む姿勢は今の選手たちは本当に素晴らしい。ただし面白みという点では、90年代のNBAの方がより個性派揃いだった」

文●北舘洋一郎

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