迎えた89年のドラフトでは、10位以内での指名が有力視されていたが、NBAのスカウトたちは、ロビンソンの性格やプレー態度に問題があると感じていた。コート上でいつもしかめ面をしていたのも、そうした印象を与えた理由のひとつだった。もともとはバスケットを始めた時に、ほかの少年たちに舐められないようにと、意識してそうした表情を作っていたのが癖になってしまったようで、これが反抗的な態度と受け止められたのだ。
ドラフト当日、ロビンソンは会場のマディソンスクエア・ガーデンに、上位指名候補の1人として招待されていた。だが、一向に名前を呼ばれず、指名を受けた仲間たちが次々と控え室から出て行くのを見送るばかり。27位のデトロイト・ピストンズにスルーされた時点で、とうとう耐えられなくなったロビンソンは、ホテルへ引き返してしまった。
ロビンソンの指名を回避した球団のひとつ、インディアナ・ペイサーズのGMだったドニー・ウォルシュは「彼がどれだけ熱意を持っているか、努力する気があるのかが、我々には伝わってこなかった」と説明した。結局、2巡目の全体36位になってようやく、ブレイザーズが手を挙げたのである。
「ロビンソンはNBAで10年プレーできる逸材だ。どうしてこんなことになってしまったのか、私にはまったくわからない」と、コネティカット大のヘッドコーチ、ジム・カルフーンもドラフトでの不当な扱いに憤慨していた。だが、結果的にはこうした屈辱を味わったことが、ロビンソンのキャリアにとってプラスとなったのは間違いない。低評価を見返してやろうと、人一倍努力するようになったからである。
「上位で指名された連中の大半が、俺より劣っているのは知っていた」
上位指名選手たちが、どのチームでどんな成績を残しているか、ロビンソンはNBA入りしてからも毎日チェックを欠かさなかったという。
よからぬ噂を聞いて警戒心を強めていたブレイザーズの選手たちも、いざロビンソンが入団すると、そうした噂話が真実ではないことがすぐにわかった。チームの顔だったクライド・ドレクスラーの抱いた第一印象も「普通にいいヤツ」である。
トラッシュトークやレフェリーに文句をつけることはあったものの、それは当時のNBAでは日常的な光景だった。ただ、性格面ではなく別の問題がチームの悩みの種になった。実力を証明しようと躍起になるあまり、ロビンソンは難しいシュート、無謀なシュートを連発してしまったのだ。
「何も言われなくても、視線の厳しさでどう思われているかはわかるさ。シュートを外すたびに、クライドが歯ぎしする音が聞こえるようだった」
それでもチームに慣れるにつれ、次第に流れに沿ったプレーができるようになり、首脳陣やチームメイトの信頼を勝ち得ていく。当時のブレイザーズはドレクスラーを軸に、テリー・ポーターやバック・ウィリアムズなど、派手さには欠けるが実力は確かな好タレントを揃えており、そのなかにあってロビンソンは、得点力と守備力を兼ね備えたインサイドプレーヤーとして、自身の立場を確立していった。(後編に続く)
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2014年4月号掲載原稿に加筆・修正。
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ドラフト当日、ロビンソンは会場のマディソンスクエア・ガーデンに、上位指名候補の1人として招待されていた。だが、一向に名前を呼ばれず、指名を受けた仲間たちが次々と控え室から出て行くのを見送るばかり。27位のデトロイト・ピストンズにスルーされた時点で、とうとう耐えられなくなったロビンソンは、ホテルへ引き返してしまった。
ロビンソンの指名を回避した球団のひとつ、インディアナ・ペイサーズのGMだったドニー・ウォルシュは「彼がどれだけ熱意を持っているか、努力する気があるのかが、我々には伝わってこなかった」と説明した。結局、2巡目の全体36位になってようやく、ブレイザーズが手を挙げたのである。
「ロビンソンはNBAで10年プレーできる逸材だ。どうしてこんなことになってしまったのか、私にはまったくわからない」と、コネティカット大のヘッドコーチ、ジム・カルフーンもドラフトでの不当な扱いに憤慨していた。だが、結果的にはこうした屈辱を味わったことが、ロビンソンのキャリアにとってプラスとなったのは間違いない。低評価を見返してやろうと、人一倍努力するようになったからである。
「上位で指名された連中の大半が、俺より劣っているのは知っていた」
上位指名選手たちが、どのチームでどんな成績を残しているか、ロビンソンはNBA入りしてからも毎日チェックを欠かさなかったという。
よからぬ噂を聞いて警戒心を強めていたブレイザーズの選手たちも、いざロビンソンが入団すると、そうした噂話が真実ではないことがすぐにわかった。チームの顔だったクライド・ドレクスラーの抱いた第一印象も「普通にいいヤツ」である。
トラッシュトークやレフェリーに文句をつけることはあったものの、それは当時のNBAでは日常的な光景だった。ただ、性格面ではなく別の問題がチームの悩みの種になった。実力を証明しようと躍起になるあまり、ロビンソンは難しいシュート、無謀なシュートを連発してしまったのだ。
「何も言われなくても、視線の厳しさでどう思われているかはわかるさ。シュートを外すたびに、クライドが歯ぎしする音が聞こえるようだった」
それでもチームに慣れるにつれ、次第に流れに沿ったプレーができるようになり、首脳陣やチームメイトの信頼を勝ち得ていく。当時のブレイザーズはドレクスラーを軸に、テリー・ポーターやバック・ウィリアムズなど、派手さには欠けるが実力は確かな好タレントを揃えており、そのなかにあってロビンソンは、得点力と守備力を兼ね備えたインサイドプレーヤーとして、自身の立場を確立していった。(後編に続く)
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2014年4月号掲載原稿に加筆・修正。
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