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NBA

コビーらと制した北京五輪の舞台裏を名将コーチKが懐古「最初の練習で、彼は全くショットを打たなかった」

秋山裕之

2020.10.18

 コビーは北京オリンピックでチーム3位の平均15.0点に2.8リバウンド、2.1アシスト、1.1スティールを残し、攻守両面でアメリカ代表を牽引していたのだが、ディフェンシブストッパーとしての役割に徹しようとしていたという。

「最初の練習で、彼は全くショットを打たなかったんだ。そこで終わった後に彼を呼び出した。『私はこれまで、君がオフェンス面で相手をなぎ倒すことを見てきた。なのに、君はここで酷いシュートをしていくのかい?』と私が言うと、次からはスタイルを変えてくれたんだ。そう、私は彼へシュートするように仕向けた唯一のコーチだったのさ」

 この大会で、コビーがフォーカスしていたのは国際大会でアメリカ代表が何度も敗れてきた天敵アルゼンチン。特にジノビリを完膚なきまでに叩きのめすことを見据えていたのである。

「あの瞬間、彼にはそういう明確なビジョンがあった。金メダルを勝ち取るためには、アルゼンチンを倒さなければならないとね。だからこそ、彼はジノビリをガードしたがっていたんだ」とコーチKが明かすも、実際は予想外の展開に。
 
 アメリカ代表は20点差でアルゼンチンに勝利したものの、ジノビリは試合開始から約6分で負傷退場。カーメロの21得点を筆頭に、計7人が2桁得点を奪う猛攻でアメリカ代表は天敵を下し、決勝へと駒を進めた。

 この年のアメリカ代表は、ウェイドがチームトップの平均16.0点を残し、レブロンが持ち前のオールラウンドなプレーを披露。さらにカーメロやハワード、クリス・ポールが躍動したものの、優勝するために自らの役割に徹したコビー、冷静沈着なゲームメークを見せたキッドというベテラン陣の働きが“王国復権”における最大の鍵になったと言っていい。

 2019年に『SLAM』のインタビューでこの年の金メダルはキャリアの中で成し遂げてきた数多くの偉業の中でどの位置に入るかと聞かれ、コビーは「トップクラスに入るね。(アメリカ代表が)危うくなっていたからだ」と切り返していたことからも、キャリアの中で貴重な瞬間だったことが分かるはずだ。

文●秋山裕之(フリーライター)
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