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NBA

ABAvsNBA――1970年代に勃発した2つのライバルリーグによる“仁義なき新人争奪戦”

出野哲也

2020.11.20

トンプソンは75年のNBAドラフトで1位指名を受けたが、ABAに入団。史上初の1位指名を拒否した選手となった。(C)Getty Images

トンプソンは75年のNBAドラフトで1位指名を受けたが、ABAに入団。史上初の1位指名を拒否した選手となった。(C)Getty Images

75年、ついにNBAの全体1位指名を拒否する選手が登場

 69年、デトロイト大の2年生だったヘイウッドは「母子家庭で養育しなければならない9人の兄弟がいる」ことを理由に、ABAのデンバー・ロケッツ(現ナゲッツ)と契約。NBAとNCAAは上を下への大騒ぎとなった。ヘイウッドは1年目からいずれもリーグトップの平均30.0点、19.5リバウンドをマークして、新人王だけでなくMVPにも選ばれた。だが、翌70年にはNBAのシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)への移籍を試みる。

 ヘイウッドとソニックスが、自分たちが所属するリーグのNBAを相手取って訴え出た異例の裁判は「選手たちがプロに転向する年齢を規制する理由はない」との判決が出て、ヘイウッド側が勝訴。アマチュア選手たちにとっては選択の幅が広がった。

 こうしてNBAでも大学卒業前の選手を獲得できるようになったが、その点ではABAに一日の長があって、71年にはジュリアス・アービングやジョージ・マッギニス、72年にはジョージ・ガービンらの有力選手をNBAに先んじて獲得に成功。71年にはダーネル・ ヒルマンら、3人のNBAドラフト1巡目指名選手がABA入りした。
 
 74年などはNBAドラフトで2位指名されたマービン・バーンズ、5位のボビー・ジョーンズら4人の1巡目指名選手がABAを選ぶといった具合に、着実にABAはNBAの牙城を崩していった。プレシーズンマッチなどでもABAのチームはNBAと互角に戦っ て、その実力を示した。

 そして75年、ついにNBAの1位指名を拒否する選手が現われる。ノースカロライナ州大のデイビッド・トンプソンが、NBAのアトランタ・ホークスではなくABAのナゲッツに入団したのだ。これはナゲッツGMのカール・シアーとヘッドコーチのラリー・ブラウンが、いずれもノースカロライナ州の出身だったことも大きな理由だったが、ホークスは3位指名のマービン・ウェブスターまでナゲッツに奪われてしまうなど、踏んだり蹴ったりだった。

 トンプソンとアービングという、史上屈指のダンカー2人が繰り広げる空中戦がどれほど凄まじかったかは、76年のABAオールスターで初めて開催されたスラムダンク・コンテストで、その一端を窺うことができる。
 

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