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NBA

今季からNBAに初挑戦する「ナッシュの後継者」。遅咲きのケビン・パンゴスが歩んだ道

小川由紀子

2021.10.04

 今夏フリーエージェントとなると、CSKAモスクワやアナドルー・エフェス、古巣のバルセロナなど、優勝候補のビッグクラブがこぞって獲得に手を挙げた。しかしパンゴスは、少年時代からの夢だった「NBAへの挑戦」を実現すべく、NBAでFA交渉が解禁になる8月を待った。

 そして9月17日、キャブズと契約を結んだことが発表された。

 これまでもNBAのサマーキャンプに参加したことはあったが、望みうる契約を獲得するまではこぎつけられなかった。そんな彼にとって、ついに訪れた、夢への第一歩だ。

 キャブズは若手が多いチームだが、パンゴスはルーキーといっても6年のプロキャリアを携えての参戦となる。シューティングガードもこなす彼の持ち味は、確率の高いアウトサイドシュートと、ビジョンの良さを生かした、フリーの味方を巧みに使えるパスワークだ。

 公式では185㎝もコート上ではもっと小柄に見えるが、流れるようなボールハンドリングから繰り出す3ポイントやアリウープパスは、ゲームの展開を覆す破壊力を持つ。そして歴代の指導者やチームメイトら、誰もが「選手としてだけでなく人間性が素晴らしい」と口を揃える好人物である彼は、コート内外で潤滑油となれるチームプレーヤーだ。
 
 キャブズのバックコート陣、ダリアス・ガーランドとコリン・セクストンの若手コンビに、ひと味違った経験値やバスケセンスを加味する存在になれるか。ジャレット・アレンや、ルーキーのエバン・モーブリーら、ビッグマンを暴れさせるパスさばきにも期待したい。

 またキャブズは、NBA11年目のベテラン、リッキー・ルビオも獲得した。欧州リーグからNBAへのトランジションを経験している彼の存在は、同じポジションのパンゴスにとって心強いことだろう。

 そしてパンゴスにはもう1人、強力なメンターがいる。カナダが産んだ英雄で、現ブルックリン・ネッツ・ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュだ。U16からカナダ代表でプレーしているパンゴスは、同国では常にナッシュの後継者と言われて育った。

 その大先輩も、代表キャンプで一緒になるたびにパンゴスを目にかけていたという。

「最初は恐れ多くて、(アドバイスをもらうといった)大きな期待はしていなかったけれど、彼はいつも僕を気にかけてくれて、アドバイスをくれたり、成長を見守ってくれている。いまでは、友人、と呼べるような存在になれた」(パンゴス)

 少年時代、ナッシュが1日500本のシュート練習をしていると耳にすると、パンゴスも同じように居残りシュート練習を日課にした。それはゴンザガ大に入っても続いていたと、大学時代の恩師も証言している。

「ナッシュは、カナダ出身の選手が、世界最高峰リーグであれほどビッグな存在になれるんだ、という夢を持たせてくれる存在だった」と、パンゴスはインタビューで語っているが、それとラプターズの本拠地の近くで育ったこと、この2つは、彼のバスケキャリアに大きな影響を与えた要素だ。

 欧州からの挑戦者ではあるが、アメリカのカレッジバスケ出身のパンゴスは、他の欧州組とは違った経験を備えている。

 低迷からの脱却を図るキャブズでそれがどう生かされるのか。彼のルーキーイヤーを見守りたい。

文●小川由紀子

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