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NBA

1日1食の苦難を乗り越え、NBA11年目で掴んだ“優勝争いの喜び”。亡き父と戦うビオンボに指揮官も期待「よりダイナミックになる」<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.05.12

 それでもウィリアムズHCは、その間もコンタクトを取り続けていたという。アフリカで開催された『バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ』でビオンボと接する機会を得たウィリアムズは、「アフリカでともに過ごしただけで、『こういう選手を指導してみたい』と思った」と彼の人柄に惚れ込んだと語っている。

 そしてビオンボも、時間が経つとともにバスケットボールに復帰するための“適切な状況と機会”を探すようになった。

 その最たる部分は、優勝争いができる球団でプレーすること。2011年のドラフトでサクラメント・キングスから全体7位で指名され、シャーロット・ボブキャッツ(現ホーネッツ)でデビューした彼も今年でキャリア11年目。

 トロント・ラプターズ、オーランド・マジック、そして再びホーネッツと、3球団を渡り歩いた10年間では、タイトル争いに絡むという経験はほとんど得られなかった。よって今回のサンズからのオファーは、まさにそれを与えてくれる格好の機会だったのだ。

 ウィリアムズHCは、このプレーオフではセンター3人を使いこなすと明言し、ニューオリンズ・ペリカンズとの第5戦では、エイトンとマギーが同時にコートに立つ“ツインタワー”も実践。約3分ほどだったが、この間は11-2と数字にも効果が現れた。サンズがこのまま勝ち進んだ際には、ディフェンスがより骨太になるビオンボの起用機会も増えるかもしれない。
 
 ちなみにビオンボは、今回サンズとの契約で手にした152万ドルのサラリーを全額寄付。故郷コンゴ民主共和国のルブンバシに、父フランソワさんの名を冠した病院を建設するそうだ。

 ビオンボはイエメンで開催されたユース大会に出場した際にスペインのコーチに見初められ、18歳でスペイン1部リーグにプロデビュー。2011年のナイキ・フープサミットに出場する機会を得て、そこでトリプルダブル(12得点、11リバウンド、10ブロック)の活躍をしたことでNBAのスカウトの目に留まり、同年のドラフトへとつながった。

 1日に1食しか食べられないような貧しい時代もあったなか、必死にお金を貯めて国際大会への旅費を工面し、息子の可能性を信じ続けた父こそが、彼にとって自分のキャリアを切り開いてくれた存在だった。

 毎試合前、コンゴから送られてきたという父からの激励メッセージはもう届かないが、 念願だったタイトルレースを戦っている息子を天国から応援していることだろう。 そんな父のサポートを感じてプレーするビオンボのエネルギーが、ウィリアムズHCの言葉通り、サンズにダイナミックさをもたらしている。

文●小川由紀子

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