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NBA

スーパースターが揃った“奇跡の年”。コビー獲得のためレイカーズが取った奇策とは?【NBAドラフト史|1996年】

大井成義

2019.11.20

当初の評価は低かったが、徐々に実力をつけていったナッシュ。シーズンMVP2度受賞は、1996年組でトップだ(C)Getty Images

当初の評価は低かったが、徐々に実力をつけていったナッシュ。シーズンMVP2度受賞は、1996年組でトップだ(C)Getty Images

■若武者コビー獲得のためレイカーズが取った奇策とは

 迎えたドラフト当日。ポイントガードもしくはピュアセンターを必要としていたシクサーズは、傑出したセンターが不在だったこともあり、狙いをアイバーソンとマーブリーに絞っていた。そして、シクサーズがフランチャイズの命運を託したのは、身長公称183㎝(実際は180㎝前後)の小兵アイバーソン。史上最低身長の1位指名選手が誕生した瞬間であり、ガードの選手が1位で選ばれたのは、1979年のマジック・ジョンソン以来、実に17年ぶりの出来事だった。

 シクサーズのフロント陣には、高校時代に逮捕歴を持つアイバーソンの素行を懸念する向きもあったが、それらマイナス要素を踏まえたうえで、アイバーソンが持つ無限のポテンシャルに賭けたのだった。1位指名直後のインタビューで、「1on1で君を止められるNBA選手は?」と聞かれ、「いないと思う」と素っ気なく答えたアイバーソン。実際、神様ジョーダンですら、彼のクロスオーバーを止めることはできなかった。

 シクサーズの狙いはズバリ当たり、アイバーソンは見事新人王を獲得し、5年後の2001年にレギュラーシーズンMVPを受賞、チームを18年ぶりとなるNBAファイナルへ導くことになる。その他にも得点王に4度、スティール王に3度輝くなど、身体のサイズを超越したずば抜けた実力と、ファッションリーダーとしてカルト的な人気を兼ね備えたアイバーソンは、リーグ屈指のスーパースターへと成長。興行面でもシクサーズに大きな恩恵をもたらす結果となった。
 
 ロッタリーで2位を獲得していたラプタ―ズはキャンビーを、3位のグリズリーズはカリフォルニア大1年生のシャリーフ・アブドゥル・ラヒームをそれぞれ指名。続いて4位のバックスがマーブリーを、5位のウルブズがアレンを指名すると、その15分後に両者のトレードが発表される。アレンに将来のドラフト1位指名権を付け、未来のオールスター同士のトレードが成立したのだった。
 
 そして、1996年組で忘れてならないのが、13位でホーネッツが指名したローワーメリオン高のコビー・ブライアントだ。ドラフト前に招いたワークアウトで、その才能に惚れ込んだレイカーズのジェリー・ウエストGMは、是が非でも獲得したいと考えていた。だが、レイカーズが持っていた指名権は24位。

 そこで13位の指名権を持っていたホーネッツを巻き込み、彼らにレイカーズが希望する選手を指名させ、その選手とレイカーズのレギュラーセンター、ブラデ・ディバッツをトレードするという大胆な取り引きをドラフト前日にまとめ上げる。ホーネッツがレイカーズから選択選手の名前を告げられたのは、ドラフト当日の選択締切5分前のことで、コビーの名前を聞いて皆驚いたという。

 一方のディバッツは、新人とのトレードなど到底受け入れられるものではなく、また女優業を営む妻の猛反対もあり、引退をちらつかせてまでトレードを拒否。だが、ウエストGMとの“非常に感情的なミーティング”の末、ドラフトの半月後ついに折れることになる。その結果、コビーは幼少の頃からの憧れだったチーム、名門レイカーズの一員になるという夢が叶ったのだった。

 そのほか、オールスターもしくはオールNBAチームに選出された選手には、6位のアントワン・ウォーカー(セルティックス=指名チーム、以下同)、14位ペジャ・ストヤコビッチ(キングス)、15位スティーブ・ナッシュ(サンズ)、17位ジャーメイン・オニール(ブレイザーズ)、20位ジードルナス・イルガスカス(キャブズ)らがいる。

 24位のデレック・フィッシャー(レイカーズ)と、 ドラフト外ではあるが、ピストンズの守護神として歴代最多タイとなる4度の最優秀守備選手賞を獲得したベン・ウォーレスも、1996年組を語る上で欠かせない選手だろう。
 

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