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NBA

「身体はヤオ・ミン、腕はカリー」フランスの超逸材ウェンバンヤマが、NBA入り前に母国のマイナークラブを選んだ理由<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.10.09

 ウェンバンヤマは、地元から遠くないパリ郊外のナンテールで育成を受け、15歳でプロデビューを果たした。当時すでに身長218cmに達していた彼のもとには、それ以前からスペインのバルセロナやセルビアなど、国内外の強豪クラブから引き抜きの声が届いていたが、両親はがんとしてそうしたオファーを断り、老舗バスケットボールクラブとして知られる母国のナンテールで育成続行を選んだ。

 そして昨年の夏、トニー・パーカーが会長を務めるアスヴェルと3年契約を結ぶと、NBAの大先輩の下で総仕上げかと思われた。ノリス・コール、ガーション・ヤブセレといった元NBA選手たちに揉まれながら、ユーロリーグも体験。13試合に出場(うち先発10試合)し、平均17分のプレータイムで6.5点、3.8リバウンド、1.9ブロックという数字を残している。

 ところがこの夏、ユーロリーグはおろかアンダーカテゴリーのユーロカップにも出場していないメトロポリタン92への移籍を発表。その大きな理由は、ほかでもないコレHCだった。
 
「NBA挑戦前に最高の状態に仕上げること」。それが、入団交渉の際にウェンバンヤマとコレHCが結んだ「ディール」だったという。

「みんなが『素晴らしい』と彼を称賛するなかで、『ダメだ』『よくない』と指摘できるのが私だ。私は彼のコーチだからね。彼は確かに素晴らしい。しかしそれでも、彼にはまだ学ぶ必要がある。彼はまだ若い。誰がどう言おうと、彼を改善するのが私の役目だ」とコレHCは語っている。

 ウェンバンヤマの目標は、「今まで誰も見たことのないような存在になること」だそうだ。ドラフト1位指名はそのための過程に過ぎず、周囲が「ナンバー1指名は誰だ?」「そのためにタンクする球団続出!」と騒いでいるのを傍目に、視線はすでにNBAの選手になったその先へ向かっている。

 メトロポリタン92のメインコートは、「アリーナ」とも呼べないような、街中の体育館といった施設だが、今シーズンは“ウェンバマニア”効果で国内外から注目を集めることになるだろう。

文●小川由紀子
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