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“天使と悪魔の顔を持つ男”トーマスと“誰もが認める紳士”デュマース。対照的な2人が牽引したピストンズの盛衰【NBAデュオ列伝|前編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.10.10

 トーマスも持てるものを惜しみなくデュマースに与え、「ジョーは私にとってはチームメイトであり、友人であり、兄弟なんだ」というほどの理想的な関係が出来上がった。プレーヤーとしても、2人には共通する部分が多かった。どちらも体格には恵まれていないが、バスケットボールに対する優れた技術とセンスを持っており、闘争心や向上心といった内面的な強さも際立っていた。

 だが、性格は対照的だった。

 トーマスは極めて複雑な男である。子ども好きで、常に微笑みを絶やさない天使の顔と、ずる賢く計算高い悪魔の顔。デュマースも「彼にはいろいろな面がある。笑顔の裏で、平気で卑劣な真似もできるんだ」と言う。シカゴのスラム街で鍛えられた向こう意気の強さも人一倍。インディアナ大時代は、誰もが恐れる闘将ボビー・ナイトに対しても一歩も引かなかったほどだ。

 一方のデュマースは、バッドボーイズの中で唯一の「グッドガイ」と呼ばれていた。

「勝ちたいのは誰でも同じだが、僕は名誉を重んじるんだ」

 トラック運転手の父から、額に汗して働くことの尊さを教え込まれたデュマースは、筋金入りの真面目人間に育った。彼は、1996年にNBAがスポーツマンシップ賞を創設した際、第1回の受賞者に選ばれている。
 
 しかし、グッドガイ=軟弱ではない。

「ジョーはほかの“バッドボーイ”と同じくらいタフな男だ」

 これは、ピストンズの当時のヘッドコーチだったチャック・デイリーの言葉である。

 そのタフネスぶりが最も発揮されたのは、マイケル・ジョーダンに対してのディフェンスだった。デュマースは、正攻法でジョーダンを守れる数少ない選手の1人であり、ピストンズがジョーダンを封じるために用いた“ジョーダン・ルール”のキーマンだった。

「『アイ・ウィル・フォロー・ヒム』って昔のヒット曲があるだろう? ♪私は追いかける、彼の行くところはどこまでも、海の底でも深すぎはしない……。これこそ、マイケルをディフェンスする秘訣さ」
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