コビー:Tマックとならやったことがある。簡単に料理したよ。丸焼きにしてやった。相手にすらならなかったね。彼に聞いてみなよ、きっと教えてくれるはず。俺が20歳の頃、彼とスニーカーのプロモーションでドイツに行ったんだ。向こうに滞在している間は、彼と毎日体育館に行って、一緒にプレーした。ある日、俺たちは11本先取の1オン1を3ゲームやった。3つとも俺が勝ったよ。そのうちのひとつは、11対2で俺の勝ちだった。3ゲームが終わったところで、彼が背中を引きつらせたらしく、それ以上はプレーできなかったけどね。
――カイリー・アービングは?
コビー:(大きな笑顔で笑いながら)カイリーは俺のお気に入りだけど、1オン1じゃ俺に手も足も出ないって、彼自身がわかってるよ。(中略)俺は1オン1をプレーするのが大好きなんだ。俺の最も得意とするところだよ。今まで負けたことがない。(5オン5とは)まったく違ったゲーム。相手と正面を切って向き合い、自分のやりたいことをやるだけさ。
――君の相手になりそうな選手は存在しない?
コビー:ケビン・デュラントには手こずるだろうな。あの腕の長さとドリブルの能力は侮れない。彼は相当タフだろう。
一見、コビーはマッグレディを単にこき下ろしているだけのようにも見えるが、補足説明させていただくと、2人はとても仲が良く、それゆえの悪態である。双方とも当時は珍しかった高校から直接NBA入りした仲間であり、言わば同士のような存在だった。年齢もプロ入りしたのも、コビーが1年だけ先輩。一昨年出演した『ESPN』のインタビューで、コビーは現役時代に最も手を焼いたマッチアップの相手は、マッグレディだったと明かしている。
「Tマックのプレーは信じられないほど凄かったよ。俺がコートでできることを、彼もすべてやることができた。文字通りすべてだ。そのうえ彼は身長が203㎝ある(コビーは198㎝)。オフェンスにもディフェンスにも弱点がない。彼をガードするのは、まるで悪夢だったよ」
『ESPN』の他の番組で、コビーとマッグレディが揃ってインタビューを受けたことがあった。その時、若い頃にドイツでプレーした1オン1の話をインタビュアーが振ると、マッグレディは「惨敗なんかしていない」と主張。それを聞いて語気を強めるコビーと、すっとぼけるマッグレディの様子を見ると、どちらがごまかしているかは火を見るより明らかだったが……。(後編に続く)
【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集!
文●大井成義
※『ダンクシュート』2019年10月号より転載