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NBA

アルコール依存症を克服し、古巣バックスで“復活”を果たした元オールスター選手ヴィン・ベイカー

杉浦大介

2019.11.29

2000年のシドニー五輪ではチーム5位の平均8.0点。決勝のフランス戦では11得点、5リバウンドの活躍で金メダル獲得に貢献した。(C)Getty Images

2000年のシドニー五輪ではチーム5位の平均8.0点。決勝のフランス戦では11得点、5リバウンドの活躍で金メダル獲得に貢献した。(C)Getty Images

 13年のキャリアで1億ドル以上を稼いだとされるが、アルコール依存症に加え、投資の失敗ですべてを使い果たしてしまった。ここまでは、残念ながらNBAではよくあるストーリー。2015年夏には、前述した通り、コネティカット州のスタバでバリスタをしていることが伝えられるなど、転落者としての人生を辿っている感は否めなかった。

 ただ、一時はどん底まで落ちながら、ベイカーはキリスト教への信仰心と家族の支えで再起する。リハビリ施設にも4度目の入所でアルコール依存症の克服に成功。こうして自分を取り戻したベイカーは、バックスのTVアナリストの職を得ると、その後にアシスタントコーチとして見事NBA復帰を果たす。

 2011年以降はアルコールを口にしておらず、現在は、ハードとバックスをつなぐ架け橋的存在として活躍。リーグ屈指の強豪に成長したチームに、小さくない貢献を果たしていることは間違いない。
 
「NBAにはパーティーが溢れかえっているけど、誰もが中毒になってしまうわけではない。ただ、そういう危険があると知っておくのは重要なこと。危険があり、何かが起こった後に克服できることも知っておかなければいけないんだ」

 スターダムと底辺の両方を経験した男だからこそ、ベイカーの言葉には他のコーチにはない説得力がある。そういった意味で、若きミリオネアが揃ったNBAには不可欠の指導者と言えるだろう。「選手たちのポジティブな支えになっていきたい」と語るベイカー。スター選手としてのピークは短かったが、コーチとしてはこのリーグで長く必要とされていくかもしれない。


■PROFILE
ヴィン・ベイカー:1971年11月23日、フロリダ州レイクウォールズ生まれ。ハートフォード大を経て、93年ドラフトで1巡目8位指名を受けバックスに入団。2年目から4年連続でオールスターに選出されるなど活躍した。97年にトレードでソニックス(現サンダー)に移籍し、99年オフに7年8600万ドルの大型契約を結ぶ。だが、その後成績は低迷し、02年にセルティックスに放出されると、その後はニックス、ロケッツ、クリッパーズと渡り歩き、06年に現役引退。現役時代から続くアルコール依存症に苦しんだが、やがて克服。17-18シーズンにバックスのテレビ解説者に採用され、シーズン途中の18年1月、HC交代に伴いアシスタントコーチに就任した。

文●杉浦大介

※『ダンクシュート』2019年12月号より転載。
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