「実に賢い選手だ。パスや得点するタイミングをよく心得ている。あらゆる要素を備えているね。バスケットボールIQも非常に高い。彼のプレーを生で観ることができて、とても興奮したよ」

　ヴェゼンコフは、ジャンプすると同時にボールをリリースする早撃ちが特徴だ。しかし彼の得点率の高さの秘密は、マークを外してフリーで打てる、オフ・ザ・ボールの動きの上手さにある。

　モナコの主砲マイク・ジェームズも、ヴェゼンコフについてこうツイートしていた。

「彼はなんでいつもオープンなんだ？彼のオフ・ザ・ボールの動きはたしかにエリート級だ。誰かスカウティングして止めようとするヤツはいないのか？」

　スクリーンをさらっとかわしたり、相手が視線をはずした場所にすかさず入り込むなど、フリーで打てるポジションに身を置くのがヴェゼンコフは絶妙に上手いのだ。ドリブルでコートを縦断するような派手さはないが、細かい動きがものすごく多いため、敵のマーカーにとってはやりづらい相手でもある。
  　16歳でギリシャのアリスからプロデビューしたヴェゼンコフは、これまでのキャリアでは長らくベンチ要員だった。しかし2020－21シーズンの途中にゲオルギオス・バルツォカスHC（ヘッドコーチ）がオリンピアコスの指揮官に着任してから、一気に開花する。

　2013年にオリンピアコスを欧州の頂点に押し上げた名将がヴェゼンコフをスターターに抜擢すると、プレータイムの増加とともに自信を得て、パフォーマンスも飛躍的に向上。もともと３ポイントには定評があったが、フィールドゴール成功率も大きくアップした。

　指揮官の信頼に応えようと、夏になるとブルガリアの田舎のジムにこもり、徹底的な個人練習を積んだというが、その特訓が如実に試合でのパフォーマンス向上につながったと、本人がインタビューで明かしている。

　現在27歳のヴェゼンコフは、今年になってオリンピアコスとの契約を2025年まで延長した。そのため、NBA入りするには契約上の問題がより複雑になる。