専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

アメリカが制した“エンビード争奪戦”の顛末。フランス協会は自国の代表入りに力を尽くすも、「結果的に着手すべきではなかった」<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.10.12

 フランス代表は、この夏のW杯でまさかの1次ラウンド敗退という失態を演じたが、その敗因として指摘されていたのは、ディフェンス面の弱さだった。

 初戦でカナダに30点差の大敗。第1クォーターではリードを奪い、3点ビハインドの僅差で後半に突入しながらも、第3クォーターが終わった時には20点差をつけられ、そのまま押し切られた。カナダに大量95点を献上すると、続くラトビア戦でも88失点を喫して2点差で敗れている。

 この状況を目の当たりにしたシウタ会長は大会後、エンビードの代表入りを示唆した。ほんの数週間前の出来事だ。

 エンビードは「もっと熟考したかったが、FFBBが設けた回答期限がそれを難しくした」ともコメントしているが、昨年にアメリカの市民権を取得していたことが大きく影響したのは間違いない。

 ディーオウが「何年も前から、エンビードからフランス代表でプレーしたい思いを聞いていた」と度々コメントしているように、おそらく彼は心底オリンピック出場を望んでいたのだろう。フランスが銀メダルを手にした東京五輪のあとも、エンビードはフランス代表の幹部にコンタクトを取っていたそうだ。
 
 その当時、彼が保持していた国籍は母国のカメルーンのみだった。カメルーンは来年7月の世界最終予選に参戦するが、世界の列強相手に出場権を掴むのは至難の業だ。一方フランスは、パリ五輪開催が決まった時点で、開催国枠での出場が決まっていた。

 エンビードはFFBBの多大な尽力により、晴れて2022年7月に国籍申請が許可されたが、その夏のユーロバスケット(欧州選手権)はコンディションを理由に辞退。するとその後の9月に、今度はアメリカ国籍の取得にも成功する。

 この夏のW杯は、結婚を理由に代表活動に参加しないことを表明していたが、この時点では決断を下せなかった、というのが本音だったのだろう。

 そしてW杯でアメリカがメダル獲得を逃したことで、ステフィン・カリーやケビン・デュラントらトップ選手たちがパリ五輪への意欲を示し、ひょっとしたらレブロン・ジェームズも?とチームUSAは盛り上がりを見せていた。SNSに記していたように、「このリーグのブラザーたちとともに闘いたい」という気持ちがエンビードの中に湧き上がっても不思議はない。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号