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NBA

「人として必要なことをすべき時がある」ウルブズ指揮官がイングルズに粋な計らい「これは私たちにできる最低限のこと」<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2025.03.25

 なお、試合前にフィンチHCは本来の先発メンバーであるマイク・コンリーにも相談したそうだが、彼もこのアイデアに大賛成し、チーム、そして球団の誰もが、イングルズの家族、とりわけジェイコブ君を喜ばせようと大いに盛り上がったのだという。

 イングルズは6分間コートに立ち、無得点、1アシストに終わったが、ウルブズは134-93で大勝。コーチの言葉通り、この粋な演出は、全員の闘争心に火をつけたのだった。

 そんな指揮官の計らいに、イングルズの試合後のコメントにも、感謝の思いがあふれていた。

「毎日、誰かが解雇され、頻繁にトレードが行なわれるこのビジネスの世界において、彼(フィンチHC)が、こうしたことを考えてくれた、というその事実だけでも大きな意味がある…」

 一方でフィンチHCは、イングルズの存在はチームにとって非常に重要であり、「これは私たちにできる最低限のこと」だとも語っている。

「ジョーは今シーズンの我々にとって非常に重要な存在だ。彼が発揮してくれているリーダーシップには感謝してもしきれない。(昨夏の)彼のトレード後に多くの選手が入団したことで、最初の思惑どおりの起用ができなくなってしまったにもかかわらず、彼は常に準備万端で、ロッカールームでの言葉や存在感、個性、リーダーシップは、とりわけ若い選手たちにとって、多くの影響を与えてくれている」

 21歳でエントリーした2009年のNBAドラフトではどのチームからも指名されず、欧州に活路を求めたイングルズは、13-14シーズンにイスラエルのマッカビ・テルアビブでユーロリーグ優勝を経験。
 
 その翌シーズンにジャズに入団し、主力として充実した8年間を過ごした。その後、ミルウォーキー・バックス、マジックを経て、今季加入したウルブズでは、ジャズ時代のチームメイトだったコンリーやゴベアと再び共闘している。

 オーストラリア代表でも、オリンピック、ワールドカップともに4大会に出場している彼は、同国を代表するレジェンドプレーヤーであり、真のリーダーだ。そんなイングルズにフィンチHCが寄せる信頼は本物だろう。

 イングルズは快くスターターを譲ってくれたコンリーについても、「長年の努力で手にした地位を、誰かのために譲ってくれるような人は、このリーグにはなかなかいない」と敬意を表していたが、それだけ彼に人望があったという証でもある。

「メダルを手にしたことなど、バスケットボール的に記憶に残る瞬間も体験してきたけれど、それ以外にも、一生忘れることのない瞬間というものがある」

 家族を喜ばせ、ジェイコブ君が大きな一歩を踏み出した瞬間を見届けただけでなく、コーチの信頼や、チームメイトたちの友情を実感したこの日は、イングルズのキャリアに永遠に刻まれる、忘れられない試合となったことだろう。

文●小川由紀子

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