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NBA

コビー&シャック――最強のデュオであり最大のライバル、奇妙な関係にあった2人の紆余曲折の物語

大井成義

2020.01.30

シャックのヒート移籍を機に、2人は本当のライバル関係に。(C)Getty Images

シャックのヒート移籍を機に、2人は本当のライバル関係に。(C)Getty Images

 ある日の練習で、シャックとコビーを含む4人が2対2をプレーした。人一倍練習熱心なコビーは、練習から全力かつフィジカルなプレーに終止し、そんなコビーのやり方に他のチームメイトは辟易していた。ただし、チームメイトのデレック・フィッシャーは「それが我々選手のあるべき姿だ」と語っている。

 そのゲームの途中、シャックがコビーを平手打ちした。2人が喧嘩を始めることはなかったが、プレーはよりフィジカルになっていった。さらにはシーズン中、チームメイトたちはコビーのセルフィッシュなプレーに我慢がならないと批難し始め、シャックはロッカールームで取材陣に対し、コビーを名指した上で「問題がある」と口撃した。

 また、コビーのジャージーの売上がシャックを上回ったことも、シャックにとっては面白くなかった。そして、シャックはオーランド・マジック時代のアンフェニー・ハーダウェイと同様に、コビーにも嫉妬している、そんな噂が流れ始める。その噂をフィッシャーは一蹴し、「シャックは勝ちたいだけ」と擁護したが、シャックとコビーの不仲はますます深刻化していった。
 
 優勝をきっかけに、2人の関係性に変化が訪れることを期待する向きもあったが、状況は一向に改善されず、むしろ日を追うごとに悪化の一途を辿った。チームミーティングの場でシャックはコビーを公然と非難し、コビーも負けずに言い返す。お互い目を合わせないことも珍しくなく、コビーはシャックと距離の近い記者を避け、シャックはコビーの足首にテーピングを施したトレーナーからの手当を拒んだ。

 挙句の果てには、お互いがトレード志願を1度ならず口にした。コビーは出演した『ESPN』のラジオで、「チームの再建が必要だが、自分の望んでいない方向に進もうとしている。もし自分の望む方向に行かないのなら、トレードしてほしい」と語り、ほかに方法はない、とまで言い切っている。

 2人がレイカーズに入団してから8年目を迎える04年7月、首脳陣は長い間頭を悩ませていた問題にとうとう終止符を打つ。シャックのトレード。シャックの要求するサラリーがあまりにも膨大な金額となり、これ以上賄い切れないと判断したフロントは、チームの将来をコビーとともに歩んでいくという決断を下したのだった。

 それまでも、チームメイトにもかかわらずライバルのような2人だったが、シャックが他チームに移籍したことで、本当の意味でのライバルとなった。とりわけコビーの最大の関心事は、シャックの存在抜きでチャンピオンリングを獲得することだった。00年から02年にレイカーズが3連覇した時は、シャックが3年連続でファイナルMVPを獲得している。コビーは自分がリーダーとしてチームを牽引し、新たな優勝を重ねることで己の力を証明してみせる、そう意気込んでいた。
 
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