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NBA

バスケ界だけでなく政界にも進出、トルコの英雄ターコル―が歩む特異なセカンドキャリア

小川由紀子

2020.04.20

2016年にエルドアン大統領(中央)の上級顧問に任命されたが、英雄が政治スキャンダルに巻き込まれていることに、嫌悪感を抱く人もいる。(C)Getty Images

2016年にエルドアン大統領(中央)の上級顧問に任命されたが、英雄が政治スキャンダルに巻き込まれていることに、嫌悪感を抱く人もいる。(C)Getty Images

 カンターは、前述の16年の未遂クーデターの首謀者であると政府が疑いをかけている、イスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン氏を支持しているため、反政府勢力の一員とみなされて政府からマークされていたのだ。

 彼の衝撃的な発言は、たちまち世界中を駆け巡った。上級顧問になってからも、表立って政治的な発言をすることは避けていたターコルーだったが、この時は「彼がロンドンに行けないのは、命の危険があるからでなく、パスポートと査証の問題。彼の発言は政治的中傷だ」とカンターの発言を否定した。

 するとカンターは、アメリカ政府から発行された査証のコピーとともに、「渡航に必要な書類ならある。それが問題ではない」と反論。さらに「妄想しているのか?でなければエルドアンの飼い犬のままか。相当金をつかまされているんだろう。しっぽ振ってろ!」とターコルーを糾弾した。

 その後この件について、ターコルーは発言を避けていたが、一度だけ『ESPN』の取材に応じ、「我々の政府は、ギュレンの団体と関わりがある人物を摘発している。テロリスト集団と関わっている彼(カンター)は危険人物だ」と話している。

 現役時代にターコルーは13歳年下のカンターと、トルコ代表で一緒にプレーしている。当時カンターは、同国注目の若手選手だった。かつての“戦友”について語った彼の表情は、複雑な思いを抱いているように見えた。
 
 協会のトップに立った際、「世界中のトルコ人バスケットボール選手が、我々の国を、最高の形で代表してくれることが私の願いだ」と語っていたターコルーは、トルコ人選手で世界最高と言われるカンターと、SNS上で舌戦を展開するような状況など望んでいなかっただろう。

 エルドアン大統領を支持しない人々からは、「大統領はターコルーの人気を利用している」という声を聞くことが多い。英雄が政治スキャンダルに巻き込まれていることに、嫌悪感を抱く人もいる。

 ただ、現役時代から、ターコルーは思ったことをストレートに発言するタイプだった。なので、結果的に人気を利用されているにせよ、大統領の顧問を引き受けたからには、彼なりの信念があってのことだろう。

 引退後にターコルーは次のように語っていた。

「私は自分がやってきたことに本当に満足している。オリンピックに出られていたら?NBAのチャンピオンになれていたら?いろいろあるだろう。でも私は自分のキャリアに後悔はまったくない。ここまでこられた自分に満足しているし、そのことに心から感謝している」

 軸足は、トルコバスケットボールの発展を担う協会会長職に置きつつ、政治というより広い面からも人々の暮らしに関わる。そんな第2の人生も、彼はきっと悔いなく生きているはずだ。

文●小川由紀子

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