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NBA

「NBAで活躍することがすべてではない」欧州最高のシューター、“ラ・ボンバ”が1年でNBAを去った理由

小川由紀子

2020.06.14

日本で開催された2006年の世界選手権でスペインの初優勝に貢献。ガソルに次ぐ平均14点をあげ、自身も思い出の大会に挙げている。(C)Getty Images

日本で開催された2006年の世界選手権でスペインの初優勝に貢献。ガソルに次ぐ平均14点をあげ、自身も思い出の大会に挙げている。(C)Getty Images

 バルセロナで絶対的なエースだったナバーロは、“自分が試合を決める”という責任を負ってプレーする使命感に飢えていた。また、妻と幼い子ども2人が、友達や家族のいないメンフィスでの暮らしに慣れなかったのも要因のひとつ。頼みのガソルも2月にレイカーズに引き抜かれ、ロサンゼルスに去ってしまっていた。

 そんな時、ヒーローの帰還を熱望するバルセロナから、破格のオファーが届いたのだった。ナバーロの気持ちに迷いはなかった。

 翌シーズンから、ナバーロのプレーはスピード、パスワークなどあらゆる点において一層冴えわたった。のちに彼自身も「29~32歳くらいが自分のキャリアのピークだった」と語っているが、その理由を「アメリカでは試合数が多く、実戦で鍛えられたのと、フィジカルの強い相手とマッチアップしてタフになれたから」と分析している。

 いったんエンジンがかかると、嵐のように炸裂する3ポイント。ラ・ボンバに火がつくとチーム全体のエナジーレベルも高騰し、会場も沸き立った。NBA最高のシューター、ステフィン・カリーもナバーロの大ファンであると公言し、片足に重心をかけて放つ彼独特のフォームを練習したと語っている。

 しかし本人は、「実はシューティングよりも、ゲームの流れを読んだりすることのほうが好き」だという。アスリートの中には「天才肌」だと言われることを嫌う選手が多いが、努力だけでは手に入れられない「天賦の才」というものがあるとすれば、ナバーロには間違いなくそれがあった。
 
 2020年6月13日、ナバーロは40歳の誕生日を迎えた。プロアスリートにしては珍しく、彼はSNSをやっていないので近況などはあまり世に知られていないが、現在は強化スタッフの一員として古巣バルセロナの発展に尽力している。

「プロチームではなく、若い世代の育成に携わりたい」というのが彼の願いだ。「成長していく過程が見たいんだ。それからもうひとつ。最近の選手はトップチームに昇格したらすぐにNBAに目がいきがちだが、その風潮を変えたい。バルセロナは本当にいいクラブなんだ。だからここで、じっくり取り組むことの良さも教えたい」

 ちなみにナバーロは、スペイン代表時代の一番の思い出に、2006年の世界選手権を挙げている。「あの大会で、人々から敬意のこもった声援を受けた時、自分のパワーがぶわーっと高いところに昇華した」のだと、日本での記憶を語ってくれた。

 来年、無事に東京五輪が開催された時、会場のさいたまスーパーアリーナにはその感触を再び味わいに来た彼の姿があるかもしれない。

文●小川由紀子

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