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NBA

【NBA名脇役列伝・前編】レックス・チャップマン――高校、大学とスター街道を歩んだ男にNBA入りを決断させた“差別”の横行

出野哲也

2020.12.13

 だが、大学生活は愉快なことばかりではなかった。当時の彼には黒人のガールフレンドがいたのだが、イメージを気にする大学関係者から交際をやめるか、もしくはそのことを公にしないようにと通達されたのだ。南部のケンタッキー州では、1980年代になってもまだ有色人種への差別意識が根強く、黒人女性と付き合っていたチャップマンも車に悪戯をされたり、“ニガー・ラバー”などと陰口を叩かれたりした。

「異なる人種と付き合うこと自体が、間違った行ないであるかのように言われた。本当にここはアメリカなのかと思ったね」

 黒人のチームメイトも、白人学生とは付き合わないよう申し渡されていたとチャップマンは憤る。
 
「大学の連中は、試合では黒人選手たちに声援を送るくせに、彼らと自分の娘が一緒にいるのは許せないんだ」

 こうした差別意識を持っていたのは大学関係者だけでなく、地元のマスコミも同様だった。

「後輩にもアラン・ヒューストン(元ニューヨーク・ニックスほか)や、デレック・アンダーソン(元ポートランド・トレイルブレイザーズほか)のような素晴らしい選手がいたのに、彼らは僕ほど持て囃されなかった。それは僕が“グレート・ホワイト・ホープ(白人の希望の星)”だったからだよ」

 チャップマンが2年終了時にアーリーエントリーを決意したのは「ロッタリーピックで指名されそうだと聞いて、プロ入りする時期が来たと思ったから」だけではなく、こうした環境に嫌気が差したからでもあったと、彼は引退後に明かしている。(後編に続く)

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2014年6月号掲載原稿に加筆・修正。

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