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NBA

わずか3試合の解雇に人種差別はなかったか?【ワタル・“ワット”・ミサカ――NBAで初めて人種の壁を破った男/後編】

大井成義

2019.11.26

 昨年スタートした新しいメディアに、『CLOSEUP360』というウェブサイトがある。新旧NBA選手のコート外での活動やトピックをじっくり紹介するというのがメインテーマとのこと。

 2018年12月、その媒体がウォリアーズの協力を得て、ミサカの誕生日に彼をユタのヴィヴィント・スマート・ホーム・アリーナで開催されるジャズ対ウォリアーズ戦と、午前中のシュートアラウンドに招くという画期的なプランを実行に移し、その様子を撮影してネットにアップしている。8分ほどの短い動画だが、これが実に感動的で素晴らしい内容なのだ。タイトルは、〝Stephen Curry, Warriors Meet Legendary Point Guard Wat Misaka〞

 杖をつきながら歩く御年95歳のミサカが、スティーブ・カーHCにエスコートされてアリーナに姿を現わす。カーがコートの傍にいたステフィン・カリーに、「1947年、NBAで初めてドラフトされたポイントガードだよ」とミサカを紹介すると、「アメイジングだね」と驚くカリー。
 
 ミサカの紹介映像に続いて、ケビン・デュラントがレジェンドの存在と、彼と触れ合うことがいかに意義深いかを訥々と語る。そしてメインのシーン。ミサカとカリーの2人だけの立ち話。その時、カリーが手を後ろに組みながら会話をする様子に、カリーのミサカに対する気持ちを見て取れたような気がする。NBAの始祖の1人であるミサカへの深いリスペクトが、カーやデュラント、カリーの言葉と態度の端々にあふれており、見る者の胸を打つ。『YouTube』にアップされているので、興味のある方はぜひ観てほしい。

 ミサカはジャッキー・ロビンソンと対極の道を歩むことになった。それでも、彼がNBAにおいて初めて人種の壁を打ち破った人物であるという史実は揺るがない。それから半世紀の時を経てNBA入りを果たした田臥勇太、渡邉雄太、八村塁ら日本をルーツに持つ選手、さらにはカリーやデュラント、そしてコビー・ブライアントやマイケル・ジョーダンといったリーグの頂点を極めた非白人のスーパースターたちも、日系二世の小さなバスケットボール選手、ワタル・〝ワット〞・ミサカが切り開いた道をたどってきたのだ。なんと誇らしいことだろう。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2019年8月号より加筆・修正。
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