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NBA

ペイサーズが企てた心温まるサプライズ。”悲運のダンク王”ヒルマンへ贈られた40年越しのプレゼント【NBA秘話・後編】

大井成義

2020.02.13

ダンク王を3人輩出したチームは、ペイサーズとホークスの2球団のみだ。(C)Getty Images

ダンク王を3人輩出したチームは、ペイサーズとホークスの2球団のみだ。(C)Getty Images

■40年の時を経て、ようやくトロフィーを手にした初代王者

 ヒルマンは現役引退後、車のセールスマンなどいくつかの職を経て、99年に古巣ペイサーズで球団職員の仕事を得た。現在はバスケットボール・キャンプ、バスケットボール・クリニック、OB会等の運営を行なう部門の副部長を務めている。

 あの幻のスラムダンク・コンテストから40年後の2017年3月8日、60歳を超え、すっかり白髪頭となったヒルマンが、ペイサーズのホームアリーナのコート中央に立っていた。その半月前に開催されたスラムダンク・コンテストでグレン・ロビンソン三世が優勝を果たし、地元でのセレモニーがホームゲームのハーフタイムに執り行なわれたのだった。その催しには04年のチャンピオン、フレッド・ジョーンズも出席。これまでダンク王を3人輩出したチームは、ペイサーズとアトランタ・ホークスの2球団だけである。

 ペイスメイツ(ペイサーズのチアリーダー)の1人がロビンソン三世に、バスケットボールを型どった金色のトロフィーを手渡すと、続けてプレゼンター役のヒルマンがチャンピオンベルトを授与した。ロビンソン三世と笑顔で一言二言交わした後、後ろを振り返ったヒルマンが、文字通り固まった。何が起きたのか、理解できなかったのである。
 
 ペイスメイツが手にしていたのは、銀色の真新しい特製トロフィー。プレートには、『DARNELL “DR. DUNK” HILLMAN, Indiana Pacers NBA Slam Dunk Champion 1977』の文字。そう、ペイサーズがサプライズで、77年スラムダンク・コンテストの優勝トロフィーを特別に準備していたのだった。

 数秒経ってようやく状況を理解したヒルマンは、全身で喜びを爆発させた。このサプライズを企てたであろう人物に向かって指をさしながら何やら叫んだ後、両手を高々と広げ、受け取ったトロフィーを誇らしげに頭上へと掲げた。

 喜びと興奮に満ち溢れた表情に、見ているこちらまで幸せな気分になってくる。40年の時を超えた、ささやかながら可笑しくも感動的なトロフィー贈呈式。バスケットボールの神様が、珍しくにっこりと微笑んだ瞬間だった。

 その優勝トロフィーを、ヒルマンは自宅のキッチンテーブルの上に置いているという。毎朝、起きて一番初めに目にしたいからだそうだ。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2019年4月号掲載原稿に加筆・修正。
 
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