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「法の支配や選手を軽視する文化」11年前の移籍破談で賠償請求訴訟開始のラサナ・ディアラ、FIFAなど痛烈批判! 国際プロサッカー選手会も支持

THE DIGEST編集部

2025.08.20

2019年にラスは現役を引退した。(C)Getty Images

2019年にラスは現役を引退した。(C)Getty Images

 かつてチェルシー、アーセナル、レアル・マドリー、パリ・サンジェルマンなどでプレーし、フランス代表として34キャップを記録した“ラス”ことラサナ・ディアラが、移籍規則に関する欧州司法裁判所の評決を受け、FIFA(国際サッカー連盟)と王立ベルギー・サッカー協会に対して賠償請求訴訟を開始する。

 ラスは、2014年にロコモティフ・モスクワからベルギーのシャルルロワへの移籍が破談となって被った損害に対し、6500万ユーロ(約112億円)の補償を求めている。ロシアのクラブから契約解除され、移籍が認められなかったのは、ロコモティフから科された罰金1050万ユーロ(約18億円)の支払いと、別の法的手続きで定められた補償を先に支払わなければならない規則にあった。

 これに対してラスは、「FIFAの規定によって自身の移動の自由が制限された」と主張。CJEU(欧州連合司法裁判所)に訴えを起こしていたが、昨年の審理で「EU法に反する」と判断され、「重大な法的リスク、予測不可能で非常に高額になる可能性のある財務上のリスク、さらには大きなスポーツ上のリスクを選手やクラブに課し、それらが総合的に国際移籍を妨げるもの」と認定された。

 FIFAはこれを受け、12月に規定を改正したものの、ラスは「個人的な補償」がなされていない点を指摘し、FIFAおよび、ベルギー協会に対して法的手続きを開始した。これについては、FifPro(国際プロサッカー選手会)もFIFAの規定改正の内容を不十分とし、今回のラスの新たな訴訟を支持しているという。

 2019年にパリSGでプロ選手としてのキャリアを終えた40歳は弁護士を通じ、「2014年8月からこの法廷闘争を強いられてきた。もう11年以上だ。私は数か月待ってから、ベルギーでの国内手続きを再開した。FIFAとベルギー協会が少なくとも良識をもって対応し、友好的な解決策を提案してくれると思ったからだ。しかし、そうならなかった。それは彼らの権利だが、CJEUが明確なメッセージを送ったにもかかわらず、法の支配や選手を軽視する文化が続いている事実を示している」と怒りを表明した。
 
 この件に関しては、2週間前に「Justice For Players(選手のための正義)」という団体が、「2002年以降の全ての現役プロ選手(男女問わず)が、キャリア収入のおよそ8%をFIFAに対して請求できる」と主張し、大規模な集団訴訟を予定している。英紙『The Guardian』は、1995年にサッカーの移籍に関する歴史を変えた「ボスマン裁定」と並ぶ「サッカー界を揺るがす地殻変動」と表現している。ちなみに、もしこの訴訟が成功すれば、FIFAは数十億ユーロ単位の賠償金の支払いを科せられる。

 この「Justice for Players」の集団訴訟も手掛ける「デュポン=イッセル法律事務所」は、「これは自分自身のためでもあるが、FIFAを本物の裁判官の前で訴えるだけの経済的・精神的手段を持たない、無名に近い若手選手たちのためにもやっている」と主張するラスの案件について、12~15か月以内に判決が出ると予想する。

 一方のFIFAは、「ECJ(欧州司法裁判所)が2024年10月にラスの件で評決を下して以来、関係者と協力し、ECJの指針に従って規則を修正する作業を進めている。FIFAは進行中の法的問題についてはコメントしない」との声明を発している。

『The Guardian』は、FIFAが今回の件で賠償とともに、さらなる移籍規定に関する改善を求められているとし、「考えられる解決策のひとつは、スペインのように全選手の契約に解除条項を盛り込む方式だ。しかし、普遍的な市場価値を算出するのは困難だろう。もうひとつの案は、標準的な『4年+1年』の契約ではなく、『2年契約+オプション』のような短期契約を結ぶ形だ。そうなれば移籍金は減少する効果があるが、選手側が高額な給与を要求する可能性もある」と報じた。

構成●THE DIGEST編集部

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