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オランダ代表MFのCBコンバートとも関連、スパレッティ新監督がユベントスに植え付けているコンセプト「異なるポジションで起用されているのは象徴的」【現地発コラム】

片野道郎

2025.11.29

スパレッティ新監督の下、オランダ代表MFのコープマイネルスは3バックの左CBで出場している。(C)Alberto LINGRIA

 11月25日のUEFAチャンピオンズリーグ第5節、ノルウェーのボデ/グリムトと敵地で対戦したユベントスは、後半アディショナルタイムにジョナサン・デイビッドが挙げた決勝ゴールで3-2と今シーズンのCL初勝利を収めて勝点を6まで伸ばし、前節までプレーオフ圏外の26位だった順位を圏内の22位まで押し上げた。

『Opta』のAI予想によれば、最終的にプレーオフ圏内(24位以内)を保つためには勝点9、プレーオフでシード権が得られる16位以内に入るには勝点12、プレーオフなしでラウンド・オブ16に進出できるトップ8入りには勝点15がボーダーラインとされている。もしリーグフェーズの残り3試合で3連勝すればトップ8入りの可能性も残っているわけだが、現実的には2勝して16位以内に入ることが目標だろう。

 残り3試合の相手は、同じく勝点6で並んでいる24位のパフォス、今なお30位とプレーオフ圏外に沈んでいるベンフィカ(監督はジョゼ・モウリーニョ)、そしてやはり勝点6で23位、南野拓実がプレーするモナコ。いずれも順位的に同レベルの相手であり、勝機は十分にある。

 11月初め、イーゴル・トゥドル監督の解任を受けてその後釜に座った前イタリア代表監督のルチャーノ・スパレッティは、前体制の基本システムだった3-4-2-1を維持しつつ、チームの振舞いを規定するプレー原則にいくつかの調整を加え、また起用する選手とそのポジションにも手を入れながら、ユベントスに新たなアイデンティティーを与えようと取り組んでいる。

 
 最も目立った変化は、本来MFのトゥーン・コープマイネルスを3バックの左CBにコンバートしたことだろう。23-24シーズンまで所属していたアタランタでは、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の下で3-4-2-1のトップ下を務めて2シーズン連続で2桁ゴールをマーク。2024年夏に就任したチアゴ・モッタ監督(当時)の強い要望によって、5800万ユーロという高額の移籍金を投じて獲得された27歳のオランダ代表は、しかし、そのT・モッタの4-2-3-1ではトップ下としてうまく機能できず、同監督のプロジェクトが解任という形で頓挫したその戦犯として扱われる不本意なシーズンを送った。

 トゥドル前監督の下では、2ボランチの一角として起用されてきたが、ビルドアップ能力ではマヌエル・ロカテッリ、縦のダイナミズムではケフレン・テュラムと比べて見劣りすることもあり、序列的には両者に続く3番手という位置づけで、スタメンから外れることが多かった。

 スパレッティがコンバートに踏み切ったのは、AZアルクマールで育ったオランダ時代にCBとしてプレーしていた実績に加え、左足の安定したパスワークを活かして最終ラインでビルドアップの起点となるだけでなく、ボールの前進に合わせてポジションを一列上げて中盤に加わり、数的優位を作り出すとともに配置の流動性を作り出すことを期待してのことだろう。イタリア代表監督時代に、同じ左利きCBのリッカルド・カラフィオーリに求めていたのと同じ役割である。

 コープマイネルス本人も「自分は元々ボールにたくさん触り、前を向いてパスを出すことでチームメイトをサポートすることを好んできたし、それで持ち味を発揮できる。トップ下ではDFを背負いゴールに背を向けてプレーすることも求められたが、自分としてはそれほど得意ではないプレー。今のこのポジションの方が合っていると思うし、気に入ってもいる」と受け入れている。

 
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「チームが新監督の戦術を咀嚼し消化しつつある過程という印象」