チャンピオンズリーグ（CL）でバルセロナがチェルシーに０－３で完敗した後、現地で不満が大きくなったのが、１点ビハインドで、なおかつ44分のロナルド・アラウホの退場で１人少ない状況で迎えた後半、反撃の糸口をまるで見出せず、なすがままに敗北を受け入れた姿勢だ。それは派手な逆転劇を幾度も演じた昨シーズンのバルサとは対照的な姿だった。

　フリージャーナリストのリカルド・トルケマダ氏も、「強豪相手の試合で、リードを許し、数的にも不利に陥れば、勝利を目指してプレーし続けるのは非常に困難だ。しかし、他と異なるチームは合理的なシナリオを受け入れない。彼らはそれに異議を唱え、拒否する姿勢を見せる」と強調。「FWを１枚減らしてマルク・カサドを投入するなどして中盤での数的不利の状況を改善しなかったハンジ・フリック監督から、ペドリ不在の中、中盤を牽引できなかったフレンキー・デ・ヨング、さらにはマルク・ククレジャの前に沈黙したラミネ・ヤマルに至るまで、諦めの気持ちがチーム全体に蔓延していた」と指摘した。

　その中で唯一の例外だったと認めるのが負傷で約２か月間戦列を離れ、前の試合のアスレティック・ビルバオ戦で復帰を果たし、この日は62分に途中出場したラフィーニャだ。「わずか30分のプレータイムの中で、最大限の力を尽くした。そのほとんどは実を結ばなかったが、それは勝者のチームが捨ててはならない誇りを引き出すために必要な努力だった。精力的なプレス、攻撃から守備への素早い切り替え、悔しさを表現するジェスチャー、ピンチの芽を摘むインターセプト、そして10人になってからバルサが放った唯一あわやと感じさせたシュート。自らに割り当てられた役割をすべて受け入れ、力をセーブせずに全力プレーをみせた」と称賛する。

　このラフィーニャの妥協しない姿勢から派生するアグレッシブさを『ラジオ・マルカ』で人気番組の司会進行を務めるミゲル・キンターナ氏は、「バルサはラフィーニャのアグレッシブさをどれほど必要としていたか。タッチ、シュート、プレスと攻守の１つ１つのプレーにそれは通底していて、とりわけスペースを見つけ、そこに走りこむ動きは相手の守備ラインを下げ、攻撃に深みを与えるうえで重要な役目を果たしている。そのオフ・ザ・ボールの動きには、自分自身がパスを受けるためのものと、囮となって味方のためにスペースを空けるものの２つがある」と分析する。
  　ラフィーニャ自身は、自らの役割について次のように語っている。「最も重要なのは、プレスで味方の守備を助ける役割だ。僕はDFの仕事を楽にし、相手にとって試合を難しくするようなプレーを、いつも心掛けている。CBにプレッシャーをかけ、スペースを奪えば、それが味方のボール保持に繋がる。僕のアプローチにチーム全体が連動して動いてくれるのは良い傾向だけど、実際のところはただがむしゃらにやっているだけ。少しでも早くボールを奪い返そうという一心で走り回っている」

　その姿勢が実ったのがチェルシー戦の４日後のラ・リーガ第14節アラベス戦（３－１）だった。怪我から復帰後、ラフィーニャは初めてスタメン出場を果たし、２アシストを記録。地元バルセロナのスポーツ紙『SPORT』のリュイス・ミゲルサンス記者は「アシストだけではない。プレスを牽引し、決定的なチャンスに結びつけ、誰よりも相手のラインの乱れを見抜いた。ラフィーニャは周囲の選手を輝かせる。彼の動きで空いたスペースに走り込むアレハンドロ・バルデのプレーを見ても、それは明らかだ」と評価する。

　アラベス戦では同じく怪我で戦列を離れていたペドリも復帰した。２日、スペイン・スーパーカップのために前倒しで行なわれたラ・リーガ第19節分のアトレティコ・マドリー戦では、復帰組２人がヤマルとともに攻撃を牽引。バルサは３－１で逆転勝利を飾った。

　同点ゴールはペドリのスルーパスに反応したラフィーニャが決めるという２人の鮮やかなコンビネーションから生まれた。チェルシー戦後に広がっていた不安の声に対し、チームは力強いメッセージで反応した。アトレティコ戦後、フリック監督は「ラフィーニャは我々にとって非常に重要な選手だ。彼が戻ってきたのはチームにとって素晴らしいニュース。今日それを目の当たりにした。とても嬉しい」と満足げに語っている。

文●下村正幸

【動画】ラフィーニャ、ペドリのスルーパスから同点ゴールをゲット！　アトレティコ戦ハイライト