かつて世界のサッカー界をリードし、ワールドカップで4度の優勝を誇るイタリアだが、近年のカルチョを取り巻く状況は厳しさを増している。代表チームは直近のW杯3大会で本大会行きを逃し、国内リーグのセリエAでは自国選手の存在感が低下している。
こうした現状を象徴するような異例の事態が、新シーズンに起きていると伊紙『Gazzetta dello Sport』が報道。「セリエAはますます貧しくなっている」と題した記事で、今季のセリエAにW杯でプレーした経験を持つイタリア人選手が「ついにひとりもいなくなった」という衝撃的な事実を伝えた。
「アッズーリ」が最後にW杯を戦ったのは12年前の2014年ブラジル大会。昨シーズン時点で唯一のW杯出場者だったマッテオ・ダルミアンがシーズン終了とともにインテルを退団して無所属となり、W杯メンバーだったユベントスのGKマッティア・ペリンが今夏の移籍市場でセリエBパレルモに移籍。セリエAからイタリア人のW杯経験者がいなくなってしまった。
同紙は、「実に1930-31シーズン以来の出来事。第1回の1930年ウルグアイ大会では、開催地を巡る事情などからイタリアは参加を見送っており、その翌シーズンのセリエAにも当然ながらW杯を経験したイタリア人はいなかった」と紹介。ただ、アルゼンチン代表として1930大会に出場したルイス・モンティが1932年にイタリア国籍を取得してアッズーリに招集されたため、この時ですら「不在期間」は1年に止まった。
1934年大会、38年大会で2連覇を果たしたイタリア代表は、1958年スウェーデン大会で初めて予選敗退を喫して本大会出場を逃したが、前後の大会には出場していたためW杯経験者の空白が生まれることはなかった。ちなみにこの後、1966年イングランド大会で北朝鮮に敗れて早期帰国を強いられたことにより、国内リーグは外国籍選手の登録禁止という措置に踏み切った。それが1970年代からの浮上と、80年代からの大繁栄につがっていった。
翻って現在、セリエAには外国籍選手があふれている。同紙は昨シーズンのセリエAにおいて、先発選手に占めるイタリア人の割合が約28~29%に止まっていたと伝え、「自国選手離れ」の延長線上に今回のW杯経験者なしという異常事態があることを示した。さらに開幕戦で表われた別の「数字」についても警鐘を鳴らしている。
「ますます少なく、プレー時間もわずか。セリエAでイタリア人選手に警報」と題した記事で、昨シーズンの開幕節で先発、途中出場を合わせて99人のイタリア人選手が起用されたのが、今シーズンは95人に減少。出場時間も6468分から6103分に減っていた。つまり「イタリア人選手にとって、丸々4試合分の出場時間が失われた」と厳しい現状を報じている。
カルチョ界では長年にわたって自国の若手を積極的に起用する必要性が叫ばれてきたが、同紙は「解決に向かうのではなく、むしろ問題が大きくなっている」と懸念。記事によると、欧州5大リーグで自国選手の起用がセリエAより少ないのは、世界各国からスター選手が集まるプレミアリーグだけで、ラ・リーガではセリエAの2倍以上。18クラブ制のフランス、ドイツでも1節あたり100人を超える自国選手が起用されているという。
セリエAの各クラブ別に見ると、「モンツァとフロジノーネはそれぞれ最多となる11人のイタリア人を起用したが、ヴェネツィア、コモ、ウディネーゼは1人に止まった。強豪ではナポリが6人、インテルが4人だった一方、ミランはジェノア、サッスオーロと並ぶ3人だけだった」。
同紙は「成長令」廃止にも触れている。成長令とは2019年5月1日から適用された減税措置。条件を満たすことで所得税50%減の優遇措置が受けられるもので、当時、各クラブは外国籍選手を獲得する際の年俸負担を大幅に軽減する手段として活用し、サッカー界は大きな恩恵を受けていた。しかし、結果的に若手イタリア人選手の出場機会が奪われ、イタリアサッカー全体の競争力や代表の低迷につながったことで、成長令は2023年12月31日に終了した。
「成長令による税制優遇措置の廃止は、本来ならクラブが地元の人材に投資するよう促すはずだった。しかし、開幕戦での現実はその正反対を示した。各クラブは周辺リーグからアルゴリズムによって選り分けられた“賭け”のような選手たちを、イタリア人よりも低いコストで獲得するようになった。ビッグクラブは、国際的な経験が乏しいという理由でイタリア人選手を拒絶し、中小クラブはより安価な外国籍選手の獲得に励んでいる」
さらに同紙は、「ユース部門への投資はUEFAの登録枠を満たすための単なる事務的な義務に成り下がり、若いイタリア人がピッチ上で活躍する機会が全くない分断されたシステムとなった」と指摘。「いまこそイタリアは、この悪循環から抜け出さなければならない。4大会連続のワールドカップ出場を逃さないためにも、早急な流れの転換が求められている」と、強い危機感をあらためて主張した。
構成●THE DIGEST編集部
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こうした現状を象徴するような異例の事態が、新シーズンに起きていると伊紙『Gazzetta dello Sport』が報道。「セリエAはますます貧しくなっている」と題した記事で、今季のセリエAにW杯でプレーした経験を持つイタリア人選手が「ついにひとりもいなくなった」という衝撃的な事実を伝えた。
「アッズーリ」が最後にW杯を戦ったのは12年前の2014年ブラジル大会。昨シーズン時点で唯一のW杯出場者だったマッテオ・ダルミアンがシーズン終了とともにインテルを退団して無所属となり、W杯メンバーだったユベントスのGKマッティア・ペリンが今夏の移籍市場でセリエBパレルモに移籍。セリエAからイタリア人のW杯経験者がいなくなってしまった。
同紙は、「実に1930-31シーズン以来の出来事。第1回の1930年ウルグアイ大会では、開催地を巡る事情などからイタリアは参加を見送っており、その翌シーズンのセリエAにも当然ながらW杯を経験したイタリア人はいなかった」と紹介。ただ、アルゼンチン代表として1930大会に出場したルイス・モンティが1932年にイタリア国籍を取得してアッズーリに招集されたため、この時ですら「不在期間」は1年に止まった。
1934年大会、38年大会で2連覇を果たしたイタリア代表は、1958年スウェーデン大会で初めて予選敗退を喫して本大会出場を逃したが、前後の大会には出場していたためW杯経験者の空白が生まれることはなかった。ちなみにこの後、1966年イングランド大会で北朝鮮に敗れて早期帰国を強いられたことにより、国内リーグは外国籍選手の登録禁止という措置に踏み切った。それが1970年代からの浮上と、80年代からの大繁栄につがっていった。
翻って現在、セリエAには外国籍選手があふれている。同紙は昨シーズンのセリエAにおいて、先発選手に占めるイタリア人の割合が約28~29%に止まっていたと伝え、「自国選手離れ」の延長線上に今回のW杯経験者なしという異常事態があることを示した。さらに開幕戦で表われた別の「数字」についても警鐘を鳴らしている。
「ますます少なく、プレー時間もわずか。セリエAでイタリア人選手に警報」と題した記事で、昨シーズンの開幕節で先発、途中出場を合わせて99人のイタリア人選手が起用されたのが、今シーズンは95人に減少。出場時間も6468分から6103分に減っていた。つまり「イタリア人選手にとって、丸々4試合分の出場時間が失われた」と厳しい現状を報じている。
カルチョ界では長年にわたって自国の若手を積極的に起用する必要性が叫ばれてきたが、同紙は「解決に向かうのではなく、むしろ問題が大きくなっている」と懸念。記事によると、欧州5大リーグで自国選手の起用がセリエAより少ないのは、世界各国からスター選手が集まるプレミアリーグだけで、ラ・リーガではセリエAの2倍以上。18クラブ制のフランス、ドイツでも1節あたり100人を超える自国選手が起用されているという。
セリエAの各クラブ別に見ると、「モンツァとフロジノーネはそれぞれ最多となる11人のイタリア人を起用したが、ヴェネツィア、コモ、ウディネーゼは1人に止まった。強豪ではナポリが6人、インテルが4人だった一方、ミランはジェノア、サッスオーロと並ぶ3人だけだった」。
同紙は「成長令」廃止にも触れている。成長令とは2019年5月1日から適用された減税措置。条件を満たすことで所得税50%減の優遇措置が受けられるもので、当時、各クラブは外国籍選手を獲得する際の年俸負担を大幅に軽減する手段として活用し、サッカー界は大きな恩恵を受けていた。しかし、結果的に若手イタリア人選手の出場機会が奪われ、イタリアサッカー全体の競争力や代表の低迷につながったことで、成長令は2023年12月31日に終了した。
「成長令による税制優遇措置の廃止は、本来ならクラブが地元の人材に投資するよう促すはずだった。しかし、開幕戦での現実はその正反対を示した。各クラブは周辺リーグからアルゴリズムによって選り分けられた“賭け”のような選手たちを、イタリア人よりも低いコストで獲得するようになった。ビッグクラブは、国際的な経験が乏しいという理由でイタリア人選手を拒絶し、中小クラブはより安価な外国籍選手の獲得に励んでいる」
さらに同紙は、「ユース部門への投資はUEFAの登録枠を満たすための単なる事務的な義務に成り下がり、若いイタリア人がピッチ上で活躍する機会が全くない分断されたシステムとなった」と指摘。「いまこそイタリアは、この悪循環から抜け出さなければならない。4大会連続のワールドカップ出場を逃さないためにも、早急な流れの転換が求められている」と、強い危機感をあらためて主張した。
構成●THE DIGEST編集部
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