海外サッカー

スペイン代表の“名勝負“5選――W杯初優勝を決めたイニエスタの一撃!EURO2012の決勝は"ティキタカ"の集大成

下村正幸

2020.07.17

延長戦にまでもつれ込んだ南アフリカW杯の決勝は、イニエスタの一発でオランダを下した。(C)Getty Images

 パスワークを芸術の域にまで高めた「ティキタカ」をベースに、数々のタイトルを獲得してきたスペイン代表。その歴史の中から「名勝負」をピックアップするとしたら、どの試合になるのか。欧州サッカーに精通する識者に、とりわけ強烈なインパクトを残した「5試合」を選んでもらった。

    ◆    ◆    ◆

2000年6月21日 EUROグループステージ3節
vsユーゴスラビア戦 〇4-3
得点者/スペイン=アルフォンソ②、ムニティス、メンディエタ
    ユーゴスラビア=ミロシェビッチ、ゴベダリツァ、コムリエノビッチ

 初戦でノルウェー相手に苦杯を喫したスペインにとって、決勝トーナメントに勝ち上がるには勝点3の獲得が絶対条件だったが、タレント軍団のユーゴスラビアに苦戦を強いられた。

 ジョゼップ・グアルディオラを中心にスペインが試合を支配するも、ユーゴスラビアの強力攻撃陣がワンチャンスをものにし、常に先行される厳しい展開に。相手の1点リードで迎えた終盤、スペインが一方的に攻め立て、それこそハーフコートゲーム状態になるも、ゴールを割れず時間だけが過ぎていく。

 しかし90分にPKから同点。スペインはその後も猛攻を仕掛け、そしてラストプレーだった。アルフォンソ・ペレスの全身全霊を込めた左足の一撃でついに勝ち越した。トップ通過を果たしたスペインは"いつもの通り"ベスト8で姿を消すが、劇的なゴールの価値は決して色褪せることはない。
 
2008年6月22日 EURO準々決勝
vsイタリア 0延長0(4PK2)
得点者/なし

 グループリーグ全勝で首位通過を決めたが、準々決勝の相手は試合巧者のイタリア。幾度もベスト8の壁に阻まれてきたスペインにとってもっとも当たりたくないチームだった。

 その予想通り序盤からスペインが優勢に試合を進めるも、じりじりした展開に。フィニッシュの精度の悪さに加え、相手GKのジャンルイジ・ブッフォンが大きな壁として立ちはだかった。結局120分間では決着がつかず、スコアレスドローのままPK戦に突入。PK戦はスペインにとって、メジャー大会の大事なところで何度も涙をのんできたこれまた鬼門だった。

 しかし、ここでイケル・カシージャスが2本ストップし、セスク・ファブレガスが最後に決め熱戦を制した。このEUROを境にスペインは前人未到のメジャー大会3連覇を達成するが、選手たちは後年口を揃えてこの一戦がターニングポイントとなったと振り返っている。