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5か月ぶりに来日した“神様“ジーコが、苦境の鹿島に伝えた“巻き返し”への心構え

小室功

2020.08.10

ジーコTDは「戦術云々ではなく、それ以前の心構え」を選手たちに伝えたという。写真:徳原隆元

 勝負に徹底的にこだわる"神様"が苦境の最中にいるチームに舞い戻った。

 自身の定期的な健康診断のためにブラジルに帰国していた鹿島アントラーズのジーコテクニカルディレクター(TD)が、およそ5か月ぶりに来日。世界中を巻き込む新型コロナウイルスの感染予防対策として、到着後2週間の隔離期間を経て、8月4日にチームに合流した。

 トレーニングの様子を見守る鋭い眼光がそこにあった。空気の変化を、チームの誰もが感じとったことだろう。その存在感たるや、やはり常人の域をはるかに超えている。

"負けず嫌いの権化"が選手たちにまず伝えたのは「戦術云々ではなく、それ以前の心構え」だった。

「攻撃的なサッカーであろうが、守備的なサッカーであろうが、ボールをつなぐサッカーであろうが、カウンター一発を狙うサッカーであろうが、どんなスタイルを目指そうと大切なのは戦うこと。最後まであきらめない気持ちや闘争心。そういうものをピッチで表現しなければ、何も成し遂げられない」

 地道で、ひたむきな努力が必ずしも結果につながるとは限らない。だが、努力し続けることを放棄してしまったらそれで終わり。不条理でもあり、条理でもある勝負の世界に長年、身を置くジーコTDの考え方はいたってシンプルだ。

 結果が出ないときほど、サッカーの原点に立ち返れ――。不振脱却へのカギはここにある、と熱いメッセージを発信した。
 
 頭のなかを少し整理しようじゃないか、とも聞こえた。

 新たなスタイルを追求していくなかで、すぐにでも成果を上げたいのはやまやまだろうが、勝負事には相手がいる。いつも自分たちの思いどおりにいくわけではない。結果を意のままに操れると考えたら、それはあまりにも虫がよすぎるだろう。

 勝つか、負けるか、引き分けるか。90分後に待っている結果に心を奪われすぎるのではなく、まずは自分たちのできること、やるべきこと――そこに集中しようじゃないか。

 8月6日に行われたオンライン会見のなかで、ジーコTDの言葉に耳を傾けていたら、ふと、1999年の夏を思い出していた。もう21年も前の話。Jリーグの運営形式や置かれたチーム状況はまったく異なるものの、ジーコTDがいわんとすることは、あのときと変わらないな、と感じたからだ。