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Jリーグ・国内

「格好よかろうが悪かろうが…」内田篤人が鹿島で叩き込まれたプロの本懐。初タイトルと3連覇までの道のりで得た財産

小室功

2020.08.25

内田は鹿島での在籍7年間で5つのタイトル獲得に貢献した。(C)SOCCER DIGEST

内田は鹿島での在籍7年間で5つのタイトル獲得に貢献した。(C)SOCCER DIGEST

「格好よかろうが、悪かろうが、どうでもいい。プロの世界は勝たないと意味がない。目の前の相手に負けていたら話にならんよ」

 口調はいつものように淡々としていた。自身の考えを声高に主張するような感じでもなかった。だが、そこにこめられた勝利への執着心は隠せなかった。

 プロとは何か、プロとはどうあるべきか。

 常勝軍団といわれる鹿島アントラーズで、数多くの先輩たちの背中を見ながら成長してきた内田篤人は、「勝利こそがすべてに優先されること」を学んだ。

 普段の物静かな印象とは打って変わって、ひとたびピッチに立てば、マリーシア(機転、知恵)が発動される。勝利のためなら手段は選ばない。こういってしまうと語弊はあるが、そのくらいの覚悟で戦ってきた。
 
 だから――。

 カウンターアタックを阻止するためなら、危険なエリアに入られる前にファウルも辞さない。リードして試合の終盤を迎えたのなら、スローインの際にわざわざペットボトルを拾い上げ、特に飲みたいわけでもない水を口に含み、相手をイラつかせることだって涼しい顔でやってのける。

 自分たちの弱みを見せず、相手の弱みを突く。徹底的に。そこに一切のためらいなどない。

 14年半にわたる現役生活にピリオドを打った内田は鹿島で過ごしたトータル7年間のなかで、5つのタイトル獲得に貢献した。その一つひとつが大事な思い出になっていることだろう。

 パウロ・アウトゥオリ監督がわずか1シーズンで鹿島を去ったあと、2007年に新たな指揮官として迎えられたのがオズワルド・オリヴェイラ監督だった。名うてのモチベーターとの触れ込みに偽りはなく、人心掌握術に長けていた。前任者同様“クラブ世界一監督”の肩書を持つ人物だった。

 しかしながら就任1年目は開幕から2連敗し、その後3引き分けと、思うようなスタートが切れず、苦しんだ。スタメンに定着していた内田もカシマスタジアムでの5節の大宮戦を終えたあと、「どうしたらいいのか、わからなくて、涙が止まらなかった」と、のちに打ち明けている。
 

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