海外サッカー

「彼は本当に悩んでいた…」ソン・フンミンが“人生を賭けた”伝説アジア大会の舞台裏。「国内で相当な議論になった」

THE DIGEST編集部

2021.03.12

若き日本代表を相手に異彩を放った3年前のソン・フンミン。このアジア大会での秘蔵エピソードが明かされた。 (C) Getty Images

 今から約3年前、インドネシアで開催されたアジア大会。そのサッカー競技で5度目の戴冠を果たしたのが韓国代表だ。

 このアンダーカテゴリーのコンペティションは、当時オーバーエイジ枠で参戦していたトッテナム・ホットスパーのソン・フンミンにとって、まさに人生を賭けた大会だった。

 8月に開催された同大会で金メダルを獲得すれば、すなわち優勝を飾れば、特例で兵役免除される。当時、21か月間に及ぶ兵役義務が迫っていた名FWにとっては、まさにラストチャンスだったのだ。

 兵役に従事すれば、スパーズとの契約はおろかサッカー人生そのものに小さくない影響が及ぶ。ゆえにU-23代表への異例の参戦に周囲が色めきだつなか、ソン・フンミンは期待通りに異彩を放った。

 開幕2戦目のマレーシア戦から6試合連続スタメン出場を果たすと、1ゴール・5アシストと若手主体の"タイガー軍団"を牽引した。今をときめく三笘薫(現川崎フロンターレ)らを擁した日本との決勝では、2アシストを記録。120分に及ぶ激闘を制する立役者となった。

【動画】FIFAの年間最優秀ゴールに選出!ソン・フンミンが決めた衝撃の「70メートル独走弾」はこちら!
 大会後に英紙『Mirror』の取材で本人が「もし優勝していなければ、僕は今ごろ、韓国の軍隊チームでプレーしていたと思う。本当にサッカー人生が懸かっていた」と回想したように、途轍もない重圧に晒されていたのは想像に難くない。

 そして今回、韓国内でソン・フンミンを伝説たらしめたアジア大会の舞台裏が明かされた。優勝メンバーのひとり、ファン・インボムが英誌『Four Four Two』の取材に応え、その一端を明かしたのだ。現在、ロシアの古豪ルビン・カザンに所属するMFは、大会直前にソン・フンミンからかけられた言葉を想起する。

「ロシアでのワールドカップを戦い終えたばかりだった彼が、アジア大会への参加を決めたのは驚きだった。大会直前だったな。風呂場から出てきたところで、ソンから電話で連絡があったんだ。彼は神経質な声色で、『頼むから怪我だけはしないでくれ。俺たちはアジア大会で絶対に勝たないといけない』って言ったんだ。あの言葉は、僕を奮い立たせたよ」
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“試練”を乗り越えたソン・フンミンに韓国国内の声は?