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【ブカツへ世界からの提言】暴力は言語道断。指導者の資格制を導入すべきでは?――日本の“悪しき伝統”をブラジル人記者はどう見る?

THE DIGEST編集部

2022.06.26

国立競技場という晴れ舞台を目指すために、各チームが日々鍛錬を積んでいる高校サッカー界。その裏では指導者による暴力が後を絶たない。(C)THE DIGEST

 今年4月、熊本県にある私立秀岳館高校のサッカー部で30代男性コーチが3年生部員に暴行した動画がSNSで拡散されると、それに段原一詞前監督も関与していたことが明らかになるという一連の騒動が、スポーツ界のみならず社会的な問題として大きな物議を醸した。

 サッカー界のみならず、日本のスポーツ界では、かねてから指導者による選手への暴力が後を絶たない。とりわけ高校生年代では、生徒を思っての"指導"と称した悪しき伝統が今なお蔓延り、指導者による体罰がたびたびメディアでも取り沙汰されている。

 そんな日本の実情を海外の識者や指導者たちはどう見るのか。列強国の現状を知る人たちの率直な意見をまとめてみたい。今回はブラジル人記者のリカルド・セティオン氏に訊いた。

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 スポーツとは人に喜びを与えるものであり、心と身体を育てるものでもある。それは万国共通であって、日本でも例外ではないはずだ。それなのにスポーツの現場で暴力が振るわれ、人に恐怖と痛みとストレスを与えていると聞く。

 あるサッカー部に関するニュースや実際に暴力が振るわれた動画は非常にショッキングなものだった。問題となった学校だけが特別なのかと調べてみると、日本では同じような例が数多くあると知った。そのなかには子どもが自ら命を絶つ例もあるという。
 
 私はもう20年以上も日本とかかわりを持っている。何度も行き、日本を心から愛してもいる。だからこそ、一連のニュースは残念なものであり、非常に悲しかった。

 日本人はどんな分野であっても最高を目指す。その考え方自体はとても素晴らしく、日本という国が大きく発展したのも、その資質によるところが大きいだろう。しかし、スポーツはあくまでもゲームだ。結果を出すために何かを犠牲にするのは絶対にいけない。まして暴力など言語道断だ。

 大袈裟かもしれないが、私は昔のソ連や東ドイツなどを想い起こした。彼らは国威発揚のためにスポーツを用い、国のメンツを保つために年端のいかない子どもたちに無理のある練習をさせる。選手たちの心身のコンディションなどはお構いなしに、結果を出せば何をしてもいいという風潮がそこにあったのだ。

 しかし、そうした指導の末路がどうなるか。少し前から(ウクライナに侵攻する以前から)、国際的な大会より締め出されているロシアがいい例である。世界的に許されるものではない。それにこうした国はほぼ独裁体制が続いており、上の指示を断れない体質にあるが、日本は違う。

 教育の現場でこのような独裁的な強権が行使されている、それも未成年者に振るわれているとすれば、とんでもないことである。
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