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海外サッカー

【ブカツへ世界からの提言】暴力ってなんだろう? 子どもの尊厳を踏みにじってはいけない――日本の“悪しき伝統”をドイツの指導者はどう見る?

THE DIGEST編集部

2022.06.30

日本ではとりわけアマチュアの現場において、暴言や暴力を交えた厳しい指導が行なわれるケースが多々ある。そんな現場をドイツで指導を行なう中野氏はどう見るのか? (C)THE DIGEST

日本ではとりわけアマチュアの現場において、暴言や暴力を交えた厳しい指導が行なわれるケースが多々ある。そんな現場をドイツで指導を行なう中野氏はどう見るのか? (C)THE DIGEST

 今年4月、熊本県にある私立秀岳館高校のサッカー部で30代男性コーチが3年生部員に暴行した動画がSNSで拡散されると、それに段原一詞前監督も関与していたことが明らかになるという一連の騒動が、スポーツ界のみならず社会的な問題として大きな物議を醸した。

 サッカー界のみならず、日本のスポーツ界では、かねてから指導者による選手への暴力が後を絶たない。とりわけ高校生年代では、生徒を思っての“指導”と称した悪しき伝統が今なお蔓延り、指導者による体罰がたびたびメディアでも取り沙汰されている。

 そんな日本の実情を海外の識者や指導者たちはどう見るのか。列強国の現状を知る人たちの率直な意見をまとめてみたい。今回はドイツで指導を続ける中野吉之伴氏に訊いた。

―――◆―――◆―――

 ドイツ・サッカーの育成における現場で、暴言あるいは暴力が全くないのかと聞かれたら、「全くないわけがない」と答える。

 例えば、「ベルリンの中学生年代の試合を観戦していた選手の父親が相手チームの親と口論になって興奮し殴り合いに」や、「ノルドラインベストファーレン州で行なわれたU-16の試合で審判の判定を巡って言い争いがエスカレート。両チームの選手同士が激しくやり合うなか、息子が蹴り飛ばされ、監督を務める父親が激怒。相手を殴り倒してしまった」といったニュースを目にした経験はある。友人や仲のいい指導者からも「ビールを飲みながら練習に来ていた指導者がいた」という話も耳にした経験がある。

 どれもよろしくない話でしかない。
 
 おそらく僕が知らないだけで、ドイツをはじめとするヨーロッパの片隅まで事細かく実地調査を行なえば、思いもよらない事件が浮かび上がってくるのだろう。

 サッカーはもちろん、スポーツには勝ち負けがついてくる。ゆえに頭では理解していても、気持ちの面でどうしても納得がいかず、不当に扱われたと感じるときはある。

 僕にしても、とある試合でこんな経験をしたことがある。

 拮抗した試合展開の終盤に選手がエキサイトしていた。僕は危険なプレーが増えないようにと、盛んに子どもたちに「慌てるな。落ち着いて。サッカーをしようよ」と声をかけ続けていた。

 それなのに、試合後、主審が僕のところにやってきて、「あなたは子どもたちを不必要に熱くして、事態を悪化させようとしていた」と言われてしまったのだ。どうやら僕の声と近くでヤジを飛ばしていた相手チームの保護者の声がごっちゃになってしまったようだが、濡れ衣もいいところだと言い争いになった。

 その時は相手チームの監督が「彼はそんなことを言っていないよ」と助け船を出してくれ、主審の誤解で終わったが、こちらの行動が意図と反して、あるいはまったく違う解釈として相手に受け止められてしまうのは、たびたび経験している。

 だからと言って、「暴力」が起こるのは致し方ないとはならないはずだ。
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