海外サッカー

“メッシ無き代表”をいかに想像するか。W杯制覇を狙うアルゼンチンが進めた「10年プロジェクト」の実像【現地発】

チヅル・デ・ガルシア

2022.11.01

目前に迫るカタールW杯を前に自身の代表キャリアについて「最後になる」と語ったメッシ。その言葉は世界に衝撃とともに広がった。(C)Getty Images

 10月初旬に公開されたTVインタビューで、アルゼンチン代表FWのリオネル・メッシは来るカタール・ワールドカップ(W杯)について「自分にとって最後のW杯になるだろう」と語った。

 あの時、彼に重大発表をしているという自覚があったかどうかは定かではない。だが、アップで映し出されたメッシはやや感傷的な表情こそ見せていたものの、比較的落ち着いた様子だった。

 その直後、自分の口から出た台詞がアルゼンチン国内で大ニュースとなり、SNSでも「Ultimo Mundial」(最後のW杯)が即刻トレンド入りしたことを知った時は、もしかしたら「しまった」と思ったのかもしれない。その後、他局で放映された別のインタビューで彼が「年齢的に考えて(カタール大会が)最後になると言ったが、W杯が終わってからまた考えてみる」と話したのは、自身の発言が招いた衝撃を和らげるためのものだったと解釈していいだろう。
 
 開幕が間近に迫るカタールW杯を「最後の挑戦」と銘打つことが、メッシ自身、そしてアルゼンチン代表のメンバーにとってプラスとなるなら良い。だが、周囲が騒ぎたてて、集中を妨げ、余計なプレッシャーとなる可能性は小さくない。

 メッシが「最後のワールドカップだし、チームにとっていい大会になるかどうかという怖さもある」と話しているとおり、有終の美を飾りたいと思う気持ちが当人に不安や緊張をも生じさせているのは事実だ。そしてアルゼンチンのメディアやファンの間でも、メッシにとって最後となる(かもしれない)W杯を前に、大ヒットしたドキュメンタリー「マイケル・ジョーダン:ラストダンス」にちなんだ「Ultimo baile de Messi」(スペイン語で"メッシのラストダンス"の意)が頻繁に話題になっている。

 今回が本当に最後となるか否かは未だメッシ本人も知るところではない。しかし、アルゼンチン・サッカー協会(AFA)関係者にとって「メッシ後のアルゼンチン代表」は現実的なテーマであり、彼らは"その時"が確実に近づいてきている事実を受け入れ、すでに準備も進めている。
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「将来のメッシ」を見逃さない対策も万全に