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「ピーターパン」の曲芸弾と“マルディーニ3世”の美弾が生まれた「パオロにとって完璧な」サン・シーロの夜

THE DIGEST編集部

2022.11.07

現在はミランのスポーツ・ダイレクター(SD)を務めるパオロ・マルディーニ。(C) Getty Images

 現地時間11月5日、セリエA第13節が行なわれ、ミランはスペツィアを2-1で下して、勝点を29に伸ばした。

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 前節でトリノに敗れ、いまだ無敗の首位ナポリとの勝点差が6に広がったミラン。下位に沈むスペツィアを本拠地サン・シーロに迎えた一戦では、主導権を握りながら迎えた21分にイスマエル・ベナセルのロビングパスをテオ・エルナンデスが胸トラップからダイレクトで叩いて先制ゴール。しかし追加点をなかなか奪えずにいると、59分にミランからスペツィアにレンタル中のダニエル・マルディーニに技巧的な巻いたシュートで同点とされてしまう。

 そのまま終盤に入り、さらにナポリとの勝点差が広がると思われた89分、サンドロ・トナーリのクロスに、オリビエ・ジルーが角度のないところから曲芸的なジャンピングボレーで合わせて勝ち越し。昨季、サン・シーロでよもやの敗北を喫した因縁の相手に、苦しみながらも雪辱を果たすこととなった劇的なゴールに、我を忘れた36歳のフランス人FWはユニホームを脱いで歓喜したことでこの試合2枚目のイエローカードを掲げられ、次節クレモネーゼ戦の出場停止も決定した。

 今季、公式戦12ゴール目を美しく決めたジルーは、「審判から退場を告げられ、私は激怒しながらロッカールームに戻った。しかし、フットボールとはこういうものだ。サンドロからのクロスを受け、決定的なゴールを決めて自分の仕事を果たした時、私の頭の中は子どものようになり、自然と喜びを表わしてしまった。(退場は)仕方がない。クレモネーゼ戦では、私なしでもチームはうまくやってくれるだろう」とのコメントを残している(スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』より)。

 この芸術弾は、2015年1月に行なわれたローマダービーでフランチェスコ・トッティ(ローマ)が決めた2-2に追いつくアクロバティック弾に酷似しているが、この時のラツィオを率いていたのが、現ミラン監督のステーファノ・ピオーリであり、彼は「ゴールを見た瞬間、トッティのゴールが私の頭の中に浮かんだ。あの時、私は敵側のベンチにいた。"残念ながら"よく憶えている」と回想。『Gazzetta dello Sport』紙は「トッティは去ったが、"ピーターパン"は帰って来た」と表現した。

「トナーリの素晴らしいパスと、オリの素晴らしいシュート」と決勝点を称賛したピオーリ監督は、「前半は良かったが、うまく試合を終わらせるためには、まだ改善すべき点がある。ナポリとの差を広げることなく、可能な限り最高のポジションでカタール・ワールドカップ前の最後の一戦(13日のフィオレンティーナ戦)を終えたい」と、課題と目下の目標を挙げている(ミラン専門サイト『sempremilan』より)。
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