海外サッカー

“想定外”のベンゼマ退団以降、マドリーの9番不在問題は未解決のまま。「FW不足&MF過多」の歪な状況を正せるのは“あの男”だけなのか?

下村正幸

2023.07.13

このベリンガムらの入団でMFは充実したマドリーだが「9番」は依然不在のままだ。(C)Getty Images

 現地時間6月7日に発表されたカリム・ベンゼマの退団(→アル・イテハドへ移籍)は、レアル・マドリーにとって想定外の事態だった。少なくとももう1シーズン、プレーすることを見込んでいた首脳陣は、その決断により、チーム作りの見直しを余儀なくされた。

 もっともマドリーは、現時点でまだベンゼマの後釜を確保できていない。エスパニョールからレンタルで獲得したホセルは、同じく退団したマリアーノ・ディアス(現在はフリー)よりも優秀なバックアッパーという位置づけだ。一方、マルコ・アセンシオと入れ替わる形でレンタル先(ミラン)から復帰したブラヒム・ディアスは10番タイプの選手。得点面ではそこまで大きな期待はできない。

 ベンゼマは昨シーズン、ややパフォーマンスを落としたとはいえ、全コンペティションで31ゴールをマーク。12ゴールのアセンシオと合わせれば、マドリーはトータルで43ゴールを失った計算になる。それをホセルとブラヒム・ディアスの2人だけで補うのは到底不可能だ。
 
 カスティージャ(Bチーム)からアルバロ・ロドリゲスを昇格させる案もあるが、今年2月にトップチーム初ゴールを記録した後、怪我も重なりカルロ・アンチェロッティ監督は継続的に起用することはなかった。しかもホセルと同じ長身が売りのFW。現時点でチーム内での立ち位置は高くはない。

 その一方でマドリーは今夏、ジュード・ベリンガムとアルダ・ギュレルを獲得した。ポジションは前者がMF、後者はトップ下、右サイド、インサイドハーフなどをこなす。いずれのポジションも、FWに比べれば補強のプライオリティーは低かったが、将来性豊かな若手をチームのニーズを度外視して獲得するという、クラブが近年掲げる補強戦略に沿う形となった。ギュレルに関しては、獲得に近づいていたバルセロナから強奪することにより、ライバルの戦力を削ぐ狙いもあったという見方が強い。
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